ip vpn-nat inside source

既存のネットワーク(LAN)同士をIPsecにてVPNを構築する際、互いのネットワークアドレスが重複している場合があります。
IPsecでは同じネットワークアドレスのLANを接続することが出来ません。
そのため、VPN-NAT変換を行うことで見かけ上の重複を回避し、既存のネットワークのIP再割り当てを行うことなくIPsecを実現します。

LAN側からWAN側へのVPN-NAT変換ルールを設定します。
NATモードの場合と、NAT+モード(IPマスカレード)の場合で、設定のしかたが異なりますので注意してください。
パラメータ"static-subnet"を指定することによりVPN-NATの変換ルールを、ネットワーク単位で指定することもできます。<ローカルアドレス・サブネットマスク>で指定したローカルアドレスから<グローバルアドレス・サブネットマスク>で指定したグローバルアドレスへの変換を、<サブネットマスク>で指定した単位で一括設定します。

VPN-NATと、IPsecインタフェースでのNATの、それぞれ設定に不整合がない場合は、IPsecインタフェースでのNATが有効となり、VPN-NATは無効となります。
※IPsecインタフェースでのNATはV01.11(00)以降サポ−ト
refreshコマンド後に有効になるコマンドです。

IKEv1専用コマンド

設定例1 NAT変換(192.168.0.0/24 → 192.168.100.0/24)

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)# ip vpn-nat inside source list 1 pool vpn-pool1
Router(config-isakmp)# ip vpn-nat pool vpn-pool1 192.168.100..0 0.0.0.255


Router(config)#access-list 1 permit 192.168.0.0 0.0.0.255 ←list 1の部分の設定
【解説】
ip vpn-nat inside source <LAN側のアドレス範囲> <WAN側のアドレス範囲>
となります。
<LAN側のアドレス範囲>は、access-listコマンドで指定します。
<WAN側のアドレス範囲>は、ip-vpn nat pool <pool名>コマンドで指定します。


設定例2 NAT+変換(192.168.0.0/24 → インタフェースアドレス)

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)# ip vpn-nat inside source list 1 interface


Router(config)#access-list 1 permit 192.168.0.0 0.0.0.255 ←list 1の部分の設定
【解説】
ip vpn-nat inside source <LAN側のアドレス範囲> <WAN側のアドレス範囲>
となります。
<LAN側のアドレス範囲>は、access-listコマンドで指定します。
<WAN側のアドレス範囲>は、インタフェースアドレスに集約する場合は"interface"、Mode-config機能により取得したアドレスに集約する場合は"modeconfig"、指定したアドレスに集約する場合は"peer <ip-address>"と指定します。


設定例3 NAT変換(一括変換)158.xxx.xxx.xxx.0/24←→192.168.100.0/24に変換する

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)#ip vpn-nat inside source static-subnet 158.xxx.xxx.xxx.0 192.168.100.0 255.255.255.0
【解説】
ip vpn-nat inside source static-subnet <ローカルサブネット> <グローバルサブネット> <サブネットマスク>
となります。
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの変換の組み合わせをスタティックに決める設定を行います。
NATスタティックを複数行なう場合には、マスクを指定し、1つのエントリで指定することができます(複数同時登録)。

例)local=192.168.100.0 global=158.xxx.xxx.0,255.255.255.0 と指定した場合
192.168.100.0 ⇔ 158.xxx.xxx.0
192.168.100.1 ⇔ 158.xxx.xxx.1
: :
192.168.100.255 ⇔ 158.xxx.xxx.255

コマンド書式

【NAT時】  ip-vpn nat inside source list <access-list番号> [変換前開始ポート番号 [変換前終了ポート番号]] pool <プール名> [ overload | [変換後開始ポート番号 [変換後終了ポート番号]] ]
【NAT+時】 ip-vpn nat inside source list <access-list番号> [開始ポート番号 [終了ポート番号]]  NAT+変換後のアドレス overload | [変換後開始ポート番号 [変換後終了ポート番号]] ]
【スタティック変換】 ip vpn-nat inside source static <ローカルアドレス> <グローバルアドレス>
【NATスタティック(一括変換)】 ip vpn-nat inside source static-subnet <ローカルサブネット> <グローバルサブネット> <サブネットマスク>


パラメータ

パラメータ 設定内容 設定範囲 省略時の値
access-list番号 変換前(ローカルアドレス)範囲を指定したアクセスリストを指定します。 1〜99
1300〜1399
省略不可
[変換前開始ポート番号 変換前終了ポート番号] 変換前のTCP/UDPポート番号(範囲)を指定します。 1〜65535 自動ポート変換
プール名 変換後(グローバルアドレス)範囲を指定したVPN-NATプール名を指定します。 NATプール名 NATの場合は省略不可
NAT+変換後のアドレス NAT+変換後のアドレスを指定します。
interface 送信インタフェースのアドレスに変換
modeconfig 相手から割り当てられたアドレスに変換
peer <IPアドレス> 設定するIPアドレスに変換
NAT+の場合は省略不可
overload localのポート番号を必ず別のポート番号に変換する場合に指定
※変換後のポート番号は 1024〜65535
overload localのポート番号を基本的には変換せずに naptを試みます。
すでにそのポート番号が使用されている場合に限り、別のポート番号に変換します。
変換後のポート番号は 1024〜65535。
 
[変換後開始ポート番号 変換後終了ポート番号] 変換後のTCP/UDPポート番号(範囲)を指定します。 1〜65535 自動ポート変換
ローカルアドレス 変換前のローカルアドレスを指定します。 IPv4アドレス形式 省略不可
グローバルアドレス 変換後のグローバルアドレスを指定します。 IPv4アドレス形式 省略不可
ローカルサブネット 変換前のローカルアドレスを指定します。
※ static-subnetを指定した場合は、host部に1を指定しないでください。
IPv4アドレス形式 省略不可
グローバルサブネット 変換後のグローバルアドレスを指定します。
※ static-subnetを指定した場合は、host部に1を指定しないでください。
IPv4アドレス形式 省略不可
サブネットマスク 変換をサブネットマスクで指定した単位で一括設定します。 IPv4アドレス形式 省略不可
最大エントリ数:リスト1エントリ(isakmp policy毎)装置全体で32エントリ
          スタティック512エントリ(装置全体)※isakmp policy毎の制限はありません


この設定を行わない場合

VPN-NATが使用できません。


適用順序

NAT変換ルールは以下の順序で適用されます。

1)static変換ルール
2)listによる変換ルール

同じ種類のルール内では、Prefix長が長いルールが優先して適用されます。
同一Prefix長の設定が複数あった場合には、config上で先に登録されたものが優先されます。
なお、configには、以下の順に登録され、同じ種類については入力順に登録されます。

1)static変換ルール(既存のホストアドレス指定)
2)static-subnet変換ルール
3)listによる変換ルール


設定モード

IKEポリシー設定モード

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