近年の製品開発において、環境への配慮は非常に重要なテーマとなっている。なかでも使用後のリサイクルは、廃棄物の削減や資源の有効活用に寄与する重要な取り組みといえる。当社グループにおける環境関連技術の研究開発拠点である環境・エネルギー研究所でも、リサイクル技術・製品の開発を主要テーマの一つとしている。なかでも重視しているのが、全国に敷設されている電線・ケーブルの被覆材料のリサイクルだ。当初からリサイクル技術の開発に携わってきた徳田が、循環型社会の実現に向けた思いを語った。
廃棄・回収された電線・ケーブルの100%リサイクルをめざして。
電線やケーブルは、当社の柱となる事業の一つですが、寿命や仕様変更への対応により張り替えられ、廃棄される電線・ケーブルの量は、年間で莫大な量になります。当社では、廃棄された電線・ケーブルの回収ネットワークを整備し、グループ内に解体・分別・再利用の専門会社として(株)材工を設立するなど、早くから電線・ケーブルのリサイクルに取り組んできました。その結果、有価物である銅やアルミニウムについては、ほぼ100%リサイクルを実現していましたが、被覆廃材については半分以上が埋立処分されていました。そこで、被覆廃材も含めた100%リサイクルを実現すべく、2000年頃から本格的な研究開発がスタート。それまで化学系の技術者としてポリマー材料や建材開発を担当していた私は、その知見を買われてこの研究テーマに携わることになりました。



さまざまな視点から、被覆廃材のリサイクルの可能性を拡げていく。
私がまず取り組んだのは、XLPE(架橋ポリエチレン)の再利用でした。被覆材にはさまざまな樹脂素材が使用されていますが、このうちポリエチレンやPVC(塩化ビニル)など、リサイクルが容易な素材は、すでに被覆材として再利用されていました。架橋構造を有するXLPEは、加熱しても流動性を示さないことから、リサイクルが困難でした。そこで、これを低分子量化により熱可塑化する独自技術の開発に成功したことで、絶縁材料としての再利用できる目処が立ちました。この成果を皮切りとして、被覆材料としての再利用だけでなく、廃プラスチックを用いた電線・ケーブル関連製品を開発することで、リサイクルの可能性の拡大に努めました。たとえば、木製ケーブルドラムの代替品として開発した樹脂製ドラムは、森林資源保護と廃棄物削減に寄与する製品として高い評価を獲得しました。また、鉄筋コンクリート製ケーブルトラフ(注)の代替品として材料開発に携わった樹脂製トラフは、重くて割れやすく、腐食しやすいといった従来品の欠点を補う上に、使用後のリサイクルも可能な製品として、注目を集めています。
(注)ケーブルトラフ:鉄道や道路沿線に敷設される開閉式のケーブル保護管。本文に戻る
環境性と経済性、双方でメリットを発揮する技術を追求する。
こうしたリサイクル製品の開発で重要なのは、従来品以上の機能・品質を実現すると同時に、コスト面でも優位性を発揮することです。いくら環境に優しい製品といえども、価格に見合うメリットがなければ市場からは受け入れられません。また、長期的なビジネス展開を考えれば、製造時にかかる材料・加工コストも可能な限り抑えることが要求されます。ただリサイクルするだけでも困難な上に、コストや品質も追求するというのは、技術者にとっては厳しいものがあります。しかし、自分の生み出した技術・製品が循環型社会の実現に寄与しているという実感は、技術者として何よりの喜びであり、困難な課題に挑む原動力となっています。環境に対する規制や法制度が厳しくなる現状は、当社にとってビジネスチャンスであり、環境面でのメリットと経済的なメリット、双方を実現した製品を生み出すことで、当社のビジネスも、また環境への貢献度も、さらに向上させていけるでしょう。
- Profile
- 環境・エネルギー研究所 環境技術開発部 新素材グループ
徳田 繁 Shigeru Tokuda 1990年入社 - 「環境技術に関わった当初は、あくまで技術面での興味しかありませんでしたが、研究を続けるうちに、環境に対する意識が高まってきました」と語る徳田。実際、数年前にマイホームを建てた際には、屋根に太陽光発電を取り入れた“エコ住宅”にしたという。「持続可能な社会を子供たちの世代に引き継ぐこと。それは技術者としてだけでなく、一人の親としての使命だと考えています」
