次世代光導波路チップの小型化に成功
〜さらなる高密度集積化を実現〜

2014年3月11日

当社は、次世代石英系光導波路(注1)(以下、PLC)のチップサイズを従来品比で1/10以下へ小型化することに成功しました。これにより、回路の高密度集積化が可能になります。

本技術に関して、本年3月に開催される光通信分野で世界最大の国際学会となるOFC2014にて、「超小型コヒーレントミキサ」と「超高屈折PLC(以下、超高ΔPLC)の低損失接続技術」に関する2件の発表を行います。

背景

近年、スマートフォンの台頭や動画配信、ソーシャルネットワーク等の普及に伴い、通信トラフィックは爆発的に増加しています。このような高度情報化社会を実現するためには、超高速かつ大容量伝送を実現する必要があります。

この超高速大容量伝送実現に向けて、光デジタルコヒーレント方式(注2)の導入が加速されており、そのための光部品や端末機器の提供が望まれています。また光デバイスにも小型化及び高機能化、低コスト化が求められており、これらの要求を満たすため、従来のPLCの設計限界を超える、革新的な技術開発が必要となっています。

内容

この度、当社は、PLCを構成する石英系ガラスの組成を変更する事で、コアとクラッドの比屈折率差を大幅に高めた超高ΔPLC技術を開発し、チップサイズを従来品と比較して1/10以下へ小型化することに成功しました。今回の開発により、さらなる回路の高密度集積化が可能になります。

基本となる超高ΔPLC技術は、昨年7月に京都にて開催された光通信関連の国際学会OECC2013において、Best Paper Awardを受賞しており、今後はモジュール化を含めた実証試験を進めると共に、さらなる品質の向上を図る予定です。

特長

従来のPLCではコア部にGeO2を添加し、クラッド部よりも屈折率を高めることでコア内部に光を閉じ込めて伝搬させていました。

回路を小型化、高密度集積化するためには、GeO2の添加量を増やして、コアとクラッドの比屈折率差を高めて光の閉じ込めを強くする必要があります。ところが、GeO2の添加量を増やすと、ガラスの構造が不安定になり、製造・品質上の問題が発生することが分かっています。

そこで今回、屈折率が大きいZrO2をコアに添加する事で比屈折率差5%以上となる超高ΔPLCを開発し、コヒーレントミキサに適用した結果、従来品と比較して1/10以下に小型化が実現しました。これにより、さらなるコヒーレントレシーバの小型化が可能になります。

開発した小型コヒーレントミキサの写真

開発した小型コヒーレントミキサ

今後の展望

次の開発ステップとして、今回開発した超高ΔPLC技術を実際の光デバイスに適用するための開発を行います。モジュール化を含めた実証実験を進めると共に、さらなる品質向上を図り、次世代高速光通信ネットワークの実現に貢献します。

(注1)シリコン等の平面基板上に堆積させた石英ガラスからなるクラッドに、光ファイバと同様の光の通り道となるコアを埋め込んで形成した光部品。光ファイバや微小光学部品を用いて作られていた各種の光部品の機能を1つのチップ上で実現できる。小型化、多チャンネル化、高機能化などに有利であり、光スプリッタ、AWG等の各種PLC部品が実用化されている。

(注2)位相変調された信号光に受信側で局発光を干渉させることで強度変調に復調し、情報を通信する通信方式。コヒーレント検波は無線通信では以前から実用化されているが、光通信ではこの数年のデジタル信号処理技術の発展により、光素子の不安定さをデジタル的に補正し、実用化可能となった。