偏波保持ファイバ「ClearLite TruePhase®」

ファイバ・ケーブル事業部門

この偏波保持ファイバーは、コア近傍に2つの応力付与部(SAP)を有するPANDA型で、情報通信用とセンサ用の2種類があります。情報通信用は980nmから1550nm用までの各使用波長用のものを取り揃えています。クロストーク・消光比は 標準 < -35dB/100mと安定した特性を有します。またシングルモード光ファイバなどと低い損失で接続することが可能です。小径で曲げられる用途を考慮に入れ、NA(屈折率差)を高くし、クラッド径を細径化するなど小曲げ径に対応した設計品も取り揃えています。

偏波保持ファイバ(パンダファイバ)の断面

特徴

・センサ用:840nm、1550nm用。クラッド径80umの細径化
・情報通信用:980nm~1550nm帯での各使用波長帯用を用意
・プルーフテストレベル2%の対応も可能
・小さい曲げ径でも安定した光学・機械特性
・偏波保持型のEDF (PM-EDF)もラインナップ

主な用途

・情報通信用機器、モジュール
・各種センサー

仕様

1.通信用偏波保持ファイバ
2.センサ用偏波保持ファイバ「GyroSil ™」

(1) 通信用偏波保持ファイバ「ClearLite TruePhase」

特長

(2) センサ用偏波保持ファイバ「GyroSil™」

特長

ClearLite TruePhase は米国におけるofsの登録商標です。

偏波保持光ファイバ(パンダファイバー)とは

一般に広く使われているシングルモード光ファイバ(SMF)には、直行する2つの偏波面を持つモードが存在します。偏波保持光ファイバはこれら2つの偏波モード間に伝搬定数差(≒速度差)を生じさせ、それぞれの偏波モードからもう一方の偏波モードへの結合を抑制し、偏波保持能力を高めた光ファイバです。伝搬定数差を発生させた光ファイバとして、コアに非軸対称な応力を与える構造の応力付与型偏波保持光ファイバが有り、PANDAファイバ(Polarization maintaining AND Absorption reducing)、楕円ジャケットファイバやbow-tieファイバが挙げられます。一方、応力付与型偏波保持光ファイバはコアがほぼ円形であるのに対し、コアの形状を非軸対称にした楕円コア光ファイバ等も偏波保持能力を有しています。これまで様々な構造の偏波保持光ファイバが提案されてきましたが、NTT殿にて開発されたPANDAファイバ(図1)は、耐偏波クロストーク(消光比)特性に優れている事に加えて比較的低損失という特徴を有しており、偏波保持光ファイバの主流になっています。

偏波保持ファイバ(パンダファイバー)の構造・製法・特性

偏波保持ファイバ(PANDAファイバ)は図1に示すように、コアの両側に円形の応力付与部が配置された構造になっています。製法は通常のSMF用母材のコアの両側に応力付与部用の穴を開け、内面を研削研磨します。その後線膨張率を大きくするためにB2O3がドープされた石英ガラスロッドをその穴に挿入し、線引母材とします。線引工程におけるファイバ化後の冷却過程で純粋石英ガラスのクラッド部に比べ、大きな線膨張率を有する応力付与部に引っ張りひずみが生じる事により、図1のX軸に沿ってコアに応力が印加されます。

偏波保持光ファイバは基本的にSMFなので、通常のSMFと同様の伝送損失、カットオフ波長、モードフィールド径などの特性を有します。これらに加え、偏波の特性を示す複屈折率と偏波クロストーク特性が重要な特徴となります。また、偏波保持光ファイバは光学部品として使用されるので、融着特性も重要な特性となります。

図1 偏波保持ファイバ(PANDAファイバ)の断面構造

図1 偏波保持ファイバ(PANDAファイバー)の断面構造

複屈折率・ビート長とは

偏波保持ファイバ(PANDAファイバ)は応力付与部で発生する応力により、コア部においてX軸方向では引っ張り応力、Y軸方向では圧縮応力を受けており、光弾性効果により複屈折が誘起され、X偏波モードとY偏波モードで異なる屈折率構造を有する事となります。このことからX、Y各偏波モードで伝搬定数(βX, βY)が異なることとなり、その差Δβにより偏波モード間での結合が生じづらくなります。この誘起された複屈折率の度合いを表す量、複屈折率Bは下式で表すことが出来ます。

複屈折率 B =(βX - βY)/ k = Δβ

また、PANDAファイバのX軸に45°の角度で直線偏光を入射した場合、ファイバ長手方向で偏光状態が変化します。X、Y各偏波の位相差が2πになり、入射時と同じ状態の直線偏光に再びなるまでの距離をビート長と呼び、下式で表されます。この値が小さいほど伝搬定数差が大きいといえます。

ビート長 L = 2π/Δβ = (波長) / B


偏波クロストークとは

図2 ファイバ長と偏波クロストークの関係

図2 ファイバ長と偏波クロストークの関係

偏波クロストークは偏波保持ファイバの偏波保持能力を表す量です。ファイバの片端からX若しくはYの一方の偏波モードに直線偏波を入射し、一定距離伝搬後の出射端で入射方向の偏波モードと、それと直行する漏洩した偏波モードの強度の比を使って表し、通常は以下の式を用いてdB単位で表します。

偏波クロストーク = 10・log ( PY / PX

X若しくはY偏波モードに入射された光は、ファイバ内を伝搬するにつれ偏波モード間での結合が生じるため、偏波クロストークは伝搬する距離に依存する量となります。ファイバ長と偏波クロストークの関係例を(図2)に示します。ファイバ長が100m以上の場合には一定の傾きを持ちますが、それを下回るとほぼ一定の値となっています。

h-parameterとは

図3 偏波保持ファイバ GyroSil のh-パラメータ温度依存性

GyroSil のh-パラメータ温度依存性

光ファイバ内で偏光状態を維持する程度を示す値です。偏波クロストークと同じ特性を別の形で表したもので、この値が小さいほど偏光維持能力が高いと言えます。このh-パラメータは次式で表すことが出来ます。単位は(1/m)です。

h-パラメータ = tanh-1(PY/PX)/ L

ここで、Lは光ファイバの条長(m)を意味します。

(図3)はセンサ用偏波保持ファイバGyroSil1550-155のh-パラメータの温度依存性のグラフです。ここでは、条長400m全長を半径20mmに全長巻きつけた光ファイバを測定しています。小さい曲げ径に巻いてあるにも拘らず、広い温度範囲で安定したh-パラメータを有しています。

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