米国立研究所向けにアルミ安定化超電導体の納入を開始
~基礎物理学の世界的発展に寄与~

2016年3月31日

当社は、フェルミ国立加速器研究所(アメリカ合衆国イリノイ州)向けに「アルミ安定化超電導体」の納入を開始しました。今回納入開始した超電導体は、アルミニウムの中に超電導撚線が埋め込まれた構造であり、世界トップレベルの高い寸法精度と電気的・機械的特性が特長です。

背景

近年、素粒子物理学の研究が世界各国で実施されています。米国のフェルミ国立加速器研究所でも、Mu2eプロジェクトが進行中であり、ミューオン(注1)と呼ばれる素粒子から電子への転換の観測を試みる実験が行われています。

当社は、欧州原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器向けとして、2003年に超電導導体を納入し、後のヒッグス粒子の発見に貢献するなど、長年にわたって世界の素粒子研究の発展に寄与してきました。

内容

このたび当社は、米国フェルミ国立加速器研究所の素粒子実験用マグネットに用いられる「アルミ安定化超電導導体」(DS1、PS)の納入を開始しました。それぞれの導体は、アルミニウムの中に超電導撚線が埋め込まれており、DS1導体には高純度アルミが、PS導体には当社の所有特許であるNi添加高純度アルミ合金(注2)が使用されています。

納入した製品には、いずれも極めて高い寸法精度や大電流を安定して流すために、これまでにない電気的・機械的特性が要求されていましたが、長年培ってきた超電導技術を元に、仕様を満足する特性バランスの開発に成功しました。加えて、今回、量産化技術の開発・改善にも取り組み、長尺導体の安定した製造が可能となっています。

今後とも当社は、各地の研究施設に最高品質の超電導導体を供給し、世界トップレベルの技術で素粒子研究をはじめとした基礎物理学の発展に貢献してまいります。

特長・スペック

  1. DS1導体
    寸法5.27mm×20.1mm
    臨界電流値(注3);23,900A at 5T
    総長;9,900m
  2. PS導体
    寸法5.52mm×30.1mm
    臨界電流値;66,250A at 5T
    総長14,300m

(注1)ミューオン:
素粒子の1種。物質の基本的な構成要素。

(注2)Ni添加高純度アルミ合金:
Niを1000ppm添加する事で、機械的強度を向上させたアルミ合金。

(注3)臨界電流値:
電気抵抗がゼロの状態(超電導状態)を保ちながら、超電導体に流せる限界電流の値。