株式会社日本ネットワークサービス様

日本ネットワークサービス様(以下、NNS様)は、2010年から一部地域でFTTHを導入され、2015年から全域のFTTH化に取り組まれました。2024年度のOLT更新に際し、10G OLTを採用しマイグレーションを開始。移行の背景や課題、導入プロセスに加え、BtoB・BtoG向けサービスやIP放送への取り組み、今後の展望について伺いました。

技術局長
山本尚生様

技術局次長 兼 情報ネットワーク部長 セールスエンジニア統括
  渡邊一弘様

技術局 情報ネットワーク部長
  林本雅之様

1Gサービスを⾧らく提供されてきましたが、10G導入のきっかけはどのようなものでしょうか

当社では通信機器の更新サイクルを9年と定めており、OLT更新のタイミングで1G継続か10G移行かを検討しました。スマートフォンやOTT(Over TheTop:インターネット回線を通じてコンテンツを配信するストリーミングサービス)、クラウドサービスの普及により、家庭内の接続端末数とデータ使用量は大幅に増加しています。これに伴い、通信サービスの需要が顕在化し、今後もさらなる高速化ニーズが見込まれることから、10Gへの移行を決断しました。

また、現在はQoE(Quality of Experience)の向上が求められています。QoEは、アプリケーションの応答性やUI/UXの使いやすさ、動画の画質などのお客様が体感する品質のことで、サービスプロバイダにとって重要な指標であり、サービス価値向上の鍵と捉えています。ネットワーク性能はQoEのベースとなるため、余裕のあるスペックでないと満足度を体感してもらうことは難しいと思います。より広帯域な10Gへ移行し、商品価値を高めることが、競争力の向上につながると考えています。

さらに、全加入者の光化についても、計画を前倒して進めており、2025年度内にはHFC設備を全て停止できる見通しとなりました。

今回、古河電工の10G化のマイグレーション提案はどうでしたか

HFC時代からの長年の関係により、当社の事情や考え方を深く理解していただいており、提案内容も的確で納得感の高いものでした。

10G化の課題はどのようなものがありましたか

マイグレーションは対象OLTが約50台と規模が大きく、費用とスケジュールの両面で、上位スイッチを含めたシステムとして慎重な機器選定、検討が必要でした。上位スイッチについては複数ベンダーを比較検討した結果、古河電工が提供するスイッチの導入を決定しました。計画通りに進行できた点は大きな成果です。

また、伝送路の分岐数については、64分岐から128分岐に移行させるか悩みました。10Gであれば128分岐も可能でしたが、将来の拡張性を考慮し、64分岐のまま運用を継続する判断をしました。

10G化の課題に対してどのような取り組みをされましたか

古河電工の「ブロードバンドリモートラボ(大阪)」にて、古河電工の製品だけでなく当社持ち込みの他社機器と接続し、上位から下位までシステムを一気通貫で試験を実施しました。実環境に近い条件での検証により、想定外の課題も事前に把握することができました。

また、VPNを用いてラボから当社サービスエリアへ接続し、上位機器を含めたIPアドレス払い出し等のネットワーク動作確認や、AG-Manager評価も実施しました。

高精度な課題の洗い出しができ、安心して10G化への移行に臨むことができました。

ブロードバンドリモートラボ(古河電工・大阪)での実験風景

古河電工のエンジニアの対応はいかがでしたか

私たちの要望に対していつも真摯に対応してくださった印象です。技術的な課題に対しても、的確に対応していただきました。上位機器のベンダーとの強いつながりを感じ、トラブルがあった場合も対応いただけるという期待感があります。

今後10GのFTTH通信インフラを使ってどのようなサービスに活用していきたいですか

1Gサービスをスタートしておりますが、現在の利用者比率はまだ低く、10G帯域を本格的に活用したサービス展開はこれからであると予想しています。

帯域が増えることで活用が期待されるサービスの一つはIP放送で、先行して実証実験を行っていますが、STBを含めた導入面の課題があり、普及はまだ先であると考えています。現在、STBについてはリモコン操作に関する問い合わせもあるので、リモコンやUIなどよりユーザーライクな製品を提供して頂ける事を期待しています。

通信の活用例としては防犯用途の監視カメラに注目しており、FTTH回線との連携を検討しています。近年は、防犯意識の高まりから設置に関する相談が増え、当社では一部のお客様を対象に、要望に応じてカメラを設置するサポートを行っており、お客様自身での機器の選定やネットワーク接続のハードルを軽減しています。

また、今後は通信とカメラを組み合わせたサービスのパッケージ化を検討していますが、様々な商品がある中でのどのように標準化していくかが課題です。

甲府市向けの閉域網サービスを行っていると伺っています
自治体、行政向けの取り組みについてお聞かせください

様々な自治体が、地域イントラネットと呼ばれる情報共有ネットワークを構築しています。甲府市は独自のイントラネット回線を持つ代わりに当社が専用FTTHネットワークを構築し、出先機関のほか、公民館や学校などの足回り回線として100回線以上を提供しています。近年では町村合併によるエリア拡大により、通常のFTTHではカバーできない場合は、古河電工のフレックスフィードシステムを使って伝送距離を延長することで、一元管理ができるようになっています。

また、行政と連携し、ブロードバンドデバイド解消にも協力しています。甲斐市との事業連携協定では2年半にわたって協議を継続し、地域の困りごとの解決にあたってきました。地域BWA(Broadband Wireless Access)による通信提供も検討しましたが、無線ではカバーしきれない広域性を考慮し、FTTH網による通信提供が必要と判断しました。こうしたインフラが整備されることで、他のサービスの提供が期待できます。

当社は企業理念として地域との共生を掲げており、このように、自治体と課題を共有しながら最適な解決策を見出し、地域に貢献していく活動を行っています。

先駆けてIP放送サーバを導入され、実証実験を行われていますが、状況はいかがでしょうか

IP放送については、業界内でも先行して取り組めていると感じています。まずは実験ネットワークにて、地上デジタル放送、コミュニティチャンネル、多チャンネル放送のIP化を検証し、技術面の確認を行いました。

今後は、早い段階で実利用に近い形での検証を進めたいと考えています。4K放送への対応も視野に入れており、10G化した回線が活かされると予想していますが、本格的な普及のためには付加価値のあるサービスが必要であると考えています。

2024年度にAG-Manager Plusを導入されましたが、状況はいかがでしょうか

機能性と操作性が向上し、お客様の受信状況がより詳しく把握できるようになりました。一方で、お客様のサービステンプレートを一括で変更する時の処理速度の高速化を期待しており、管理監視対象が多い場合の動作を今後検証していく予定です。

10G OLTと上位スイッチ

今後古河電工にはどのようなことを期待したいですか

FTTH化の完了により、広域にわたって広帯域サービスを提供できるインフラの整備は一つの節目を迎えました。今後はこの高性能なインフラをどのように活用していくかが重要なポイントになると考えています。全国各地で様々な工夫がなされている中、当社の実情に即した提案を今後もお願いできればと思います。

管理監視システムの検討

各記事の内容および記事に登場する方の会社名や肩書きは取材当時のものです。

2025年4月取材

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