日本労働組合総連合会(略称:連合)は、政府、政党、企業などから独立した自主的組織としての主体性を堅持し、自由にして民主的な労働運動の強化・拡大と労働運動の基盤強化を目標に掲げている非営利組織体です。
「一般の企業は営利活動の情報を基幹系と位置付けていますが、労働団体では労働組合活動のための意思決定情報や合意形成のための情報が基幹系となります。そのため、秘密の保持ではなく、合意形成のための知識情報を共有し、迅速な意思伝達を行うためには、システムの安全性や安定性が不可欠です。その結果、連合イントラネット(@RENGO)には、VPNの構築が必須の条件でした」
連合では、2000年初頭頃から、従来のFAXと郵便による情報配信(文書情報、政策、労働、組織などの提案資料など)から、非公開のWebサイトを利用した情報共有が本格的に行われるようになってきました。
「連合本部が積極的にインターネットを導入したのは今から5年前です。それ以前は、本部で一括購入したインターネットの接続IDとパスワードを構成組織や地方連合に配布して、コンテンツサーバを立ち上げ、そこにアクセスしていました」
「2000年1月に中央官庁で起きたクラッカー事件がきっかけになって、ユーザーIDとパスワードだけで保護している連合の情報システムには、危険性のあることが再認識されました。万が一の被害を想定して調査した結果、復旧に要する時間は一週間、費用が約4000万円はかかる、という試算になったのです。組合の予算で活動している関係から、こうした不測の事態に対して緊急な予算配分は困難です。そこで、被害にあう前に安全なシステムを構築することの重要性が高くなってきました」
連合本部でVPN構想が出てきたのは、2年ほど前になります。その過程の中で、VPNサーバとPCによるVPNクライアントという方式も検討されました。
「VPNに関しては、いろいろな手法を模索しましたが、VPNクライアントをソフトで処理しようとすると、インストールに手間がかかり、OSの違いによる影響やマシンへの負荷が大きくなってしまうために諦めました。最終的には、ハードウェアによるVPNが最適であると判断し、連合本部で120組織分のルータを一括で購入して、全国に配布しました。その時のVPNルータが、MUCHO-EVでした」
連合本部では、フレッツISDNなどを利用したインターネットVPNを構築したことで、意思決定にかかわる重要な情報とか、本部と加盟組織間でのみ共有できる意思決定会議の資料情報などをイントラネット内のコンテンツサーバに登録できるようになりました。
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