ip vpn-nat inside destination

既存のネットワーク(LAN)同士をIPsecにてVPNを構築する際、互いのネットワークアドレスが重複している場合があります。
IPsecでは同じネットワークアドレスのLANを接続することが出来ません。
そのため、VPN-NAT変換を行うことで見かけ上の重複を回避し、既存のネットワークのIP再割り当てを行うことなくIPsecを実現します。

WAN側からLAN側へのVPN-NAT変換ルールを設定します。
NATモードの場合と、NAT+モード(IPマスカレード)の場合で、設定のしかたが異なりますので注意してください。
パラメータ"static-subnet"を指定することによりVPN-NATの変換ルールを、ネットワーク単位で指定することもできます。<グローバルアドレス・サブネットマスク>で指定したグローバルアドレスから<ローカルアドレス・サブネットマスク>で指定したローカルアドレスへの変換を、<サブネットマスク>で指定した単位で一括設定します。

refreshコマンド後に有効になるコマンドです。


設定例1 NAT変換(スタティック登録) 192.168.100.1宛で受信したら192.168.0.1に変換する

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)#ip vpn-nat inside destination static 192.168.100.1 192.168.0.1
【解説】
ip vpn-nat inside destination static <WAN側アドレス> <LAN側アドレス>
となります。
これ以外のパケットをNAT変換したい場合は、ip vpn-nat inside sourceコマンドを使用して、設定します。


設定例2 NAT+変換(スタティック登録) 192.168.100.1:ポート番号1500で受信したら、192.168.0.1:ポート番号80に変換する

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)#ip vpn-nat inside destination static 192.168.100.1 1500 192.168.0.1 80
【解説】
ip vpn-nat inside destination static <WAN側アドレス WAN側ポート番号> <LAN側アドレス LAN側ポート番号>
となります。
これ以外のパケットをNAT+変換したい場合は、ip vpn-nat inside sourceコマンドを使用して、設定します。


設定例3 NAT変換(一括変換)192.168.100.0/24←→158.xxx.xxx.xxx.0/24に変換する

Router(config)# crypto isakmp policy 1
Router(config-isakmp)#ip vpn-nat inside destination static-subnet 158.xxx.xxx.xxx.0 192.168.100.0 255.255.255.0
【解説】
ip vpn-nat inside destination static-subnet<グローバルサブネット> <ローカルサブネット> <サブネットマスク>
となります。
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの変換の組み合わせをスタティックに決める設定を行います。
NATスタティックを複数行なう場合には、マスクを指定し、1つのエントリで指定することができます(複数同時登録)。

例)local=192.168.100.0 global=158.xxx.xxx.0,255.255.255.0 と指定した場合
192.168.100.0 ⇔ 158.xxx.xxx.0
192.168.100.1 ⇔ 158.xxx.xxx.1
: :
192.168.100.255 ⇔ 158.xxx.xxx.255


コマンド書式

【NATスタティック(複数指定)時】  ip vpn-nat inside destination list <access-list番号> [開始ポート番号 [終了ポート番号]] pool <プール名> [ポート番号]
【NATスタティック(1対1変換)、NAT+スタティック時】 ip vpn-nat inside destination static <グローバルアドレス> [開始ポート番号 [終了ポート番号]] <ローカルアドレス> [ポート番号]
【NATスタティック(一括変換)】 ip vpn-nat inside destination static-subnet <グローバルサブネット> <ローカルサブネット> <サブネットマスク>


パラメータ

パラメータ 設定内容 設定範囲 省略時の値
access-list番号 変換前(グローバルアドレス)範囲を指定したアクセスリストを指定します。 1〜99
1300〜1399
省略不可
グローバルアドレス 変換前のグローバルアドレスを指定します。
list <access-list番号> アクセスリストで指定したIPアドレス範囲
<IPアドレス> 指定したIPアドレス
modeconfig 相手から割り当てられたアドレス
peer <IPアドレス> VPNピアから指定されて設定したIPアドレス
省略不可
[開始ポート番号 終了ポート番号] 変換前のTCP/UDPポート番号(範囲)を指定します。 1〜65535 ポート変換しない
プール名 変換後(ローカルアドレス)範囲を指定したNATプール名を指定します。 NATプール名 省略不可
ローカルアドレス 変換後のローカルアドレスを指定します。 IPv4アドレス形式 省略不可
ポート番号 変換後のTCP/UDPポート番号を指定します。 1〜65535 ポート変換しない
グローバルサブネット 変換前のグローバルアドレスを指定します。
※static-subnetを指定した場合は、host部に1を指定しないでください。
IPv4アドレス形式 省略不可
ローカルサブネット 変換後のローカルアドレスを指定します。
※static-subnetを指定した場合は、host部に1を指定しないでください。
IPv4アドレス形式 省略不可
サブネットマスク 変換をサブネットマスクで指定した単位で一括設定します。 IPv4アドレス形式 省略不可
最大エントリ数:リスト1エントリ(isakmp policy毎)装置全体で32エントリ
          スタティック512エントリ(装置全体)※isakmp policy毎の制限はありません

    


この設定を行わない場合

VPN-NATが使用できません。


設定モード

IKEポリシー設定モード

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