○概要
- RSA 公開鍵において、脆弱性の問題が確認されております。この脆弱性により DoS 攻撃を受ける可能性が指摘されています。
RSA公開鍵は 1024 ビットや 2048 ビットといった大きな整数の Modulus n と、3 〜 65537 程度の小さな整数の Exponent e から構成されます。Exponent e は RSA 公開鍵による計算処理を効率化するため通常は 3 〜 65537 といった小さい整数が利用されますが、Modulus n と同程度の大きな整数が使用された場合や、Modulus n のビット数が非常に大きい場合、この公開鍵を利用した計算処理に長大な時間がかかる状況となるため、DoS 攻撃が可能とされています。
・参考情報
○当社製品に対する影響
- 当社製品では、RSA 公開鍵を利用している場合に影響を受ける可能性があります。
具体的には、以下の機能で RSA 公開鍵を利用する場合があります。
当社製品に対する影響は以下の通りです。
×:影響あり
−:当該機能をサポートしているが影響なし
=:当該機能をサポートしていないため影響なし
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製品名 |
IPsec の PKI 機能 |
SSH 機能 |
FITELnet-F80/F100/F120/F1000 |
× |
− |
FITELnet-F40 |
× *1 |
= |
MUCHO-EV/PK |
× |
= |
FITELnet-F3000 |
= |
× |
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IPsec の PKI 機能については、PKI を利用している場合にのみ影響を受ける可能性があります。具体的には、以下の場合に影響を受けます。
- 信頼する CA 局の証明書に記載された RSA 公開鍵が本件脆弱性情報で指摘される不正な鍵であり、その CA 局によって証明されたピアの証明書が対向装置から通知された場合
- 信頼する CA 局により証明された対向装置の RSA 公開鍵が、本件脆弱性情報で指摘される不正な鍵であった場合
PKI 機能を利用しない場合には影響を受けません。また、対向装置の不正な RSA 公開鍵が信頼する CA 局によって証明されていない場合にも影響を受けません。
影響の程度は不正な RSA 公開鍵のビット数に依存し、例えば Modulus n が 8192 ビットで Exponent e が 8191 ビットの場合には、タイムアウトによりセッション確立に失敗したり、KeepAlive 失敗によりセッション切断となるような、DoS 攻撃となる影響を受ける可能性があります。
以上のように、本脆弱性により DoS 攻撃を受ける可能性はあるものの、CA 局が正しく運用されている限り影響を受けることはないため、IPsec の PKI 機能において本件脆弱性の影響を受ける可能性は限定的と考えられます。
SSH 機能については、ホスト認証を行う場合と、公開鍵認証によるユーザ認証を行う場合に影響を受ける可能性があります。
ホスト認証は SSH 接続相手のホストが正しいホストかどうかを確認する機能で、接続相手から RSA 公開鍵を受け取り、これを検証することで正しい接続相手かどうかを確認することができます。接続相手から不正な RSA 公開鍵を受け取った場合には確認に時間がかかる影響を受けます。
公開鍵認証によるユーザ認証は SSHv2 プロトコルでサポートされる機能で、SSHv2 サーバは接続相手の RSA 公開鍵証明書を受け取り証明書の検証を行うことで、正しいユーザからの接続であるかどうかを確認します。証明書に不正な RSA 公開鍵が記載されている場合と、証明書を発行した CA 局が不正な RSA 公開鍵をもっている場合に、検証に時間がかかる影響を受けます。
当社製品では、SSH サーバ機能ではホスト認証も公開鍵認証によるユーザ認証も行わないため、SSH サーバ機能のみを実装した装置では影響を受けません。SSH クライアント機能ではホスト認証に対応しており、SSH サーバから不正な RSA 公開鍵が通知された場合に、当該 SSH クライアントのみが影響を受けます。ただし、影響を受けるのは不正な RSA 公開鍵を通知された SSH クライアントのみとなり、一時的に CPU 使用率が上昇することと、不正な RSA 公開鍵を通知する SSH サーバへの接続に時間がかかるという影響を受けるのみであるため、本脆弱性による影響は限定的と考えられます。
○回避方法
- IPsec の PKI 機能においては、以下の方法により回避することが可能です。
- PKI 機能を利用しない
- 正しい RSA 公開鍵を持った信頼できる CA 局のみを利用し、この CA 局においては不正な RSA 公開鍵を証明しない
SSH 機能においては、以下の方法により回避することが可能です。
- SSH クライアント機能を利用しない
- SSH クライアント機能を利用する場合には、信頼できる SSH サーバに対してのみ接続する
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