折り畳み式止水板F-shieldに込めた
開発者の思い

折り畳み式止水板F-shield 開発チーム

松井氏・飯田氏・代田氏

簡単・素早く・手軽に浸水対策!
折り畳み式止水板 F-shield

いま日本全国で浸水被害が相次いでいる。

地球温暖化から大雨の量や頻度が増えており、ダムや堤防の整備といったハード対策だけでは浸水被害を防げなくなってきたのだ。そんな中、手軽に備えられて、だれでも簡単に素早く浸水対策できるとして、人気をあつめている浸水対策用の防災製品がある。その名も「折り畳み式止水板 F-shield」だ。

工場玄関前に設置された折り畳み式止水板F-shield

折り畳み式止水板「F-shield」は、台風や洪水、ゲリラ豪雨等による浸水被害を防ぐ、土嚢(土のう)に代わる防災製品である。

地面において開き、金具をロックするだけで組み立てられ、優れた止水性、固定力を発揮する。特別な工事も不要だ。製品同士を連結する事ができ、連結部にはそれぞれ最大50mmの横幅調整機能がある為、幅広い間口に設置できる。折り畳むと厚さが80mmまで薄くなり、棚やちょっとした隙間など、狭い場所にも手軽に収納可能。重さ5.8kg/枚と軽量で持ち運びやすく、設置に時間もかからない為、急な浸水被害にも素早く対応可能だ。

棚に保管された折り畳み式止水板F-shield

今までにない新しい止水板開発への挑戦

―― 日本全国の浸水対策に貢献している折り畳み式止水板 F-shield。

開発リーダーに選ばれたのは当時41歳の飯田であった。

以下、技術開発部 飯田氏(以下、飯田)にお話を伺いました。

「とある県にある某防災センターを視察した時のことです。語り部の方より災害時の経験談をお聞きし自然災害はいつでも、だれにでも襲い掛かる可能性がある、他人事ではないのだ、ということを心の底から実感しました。そのことがきっかけで、開発品を通して自分の身の回りにいる家族や友人、そして災害の影響で困っている人たちの助けになれないか社会全体の強靭化に貢献できないか、と考え始めました。」

私たちの部門は、大手ハウスメーカー向け耐水住宅用設備の開発を長年担当してきたことから、誰にも負けない止水設計技術や施工簡略化技術を持っていました。これら技術を活かせば、自然災害の中でも特に浸水被害で困っている人たちを助けられるのではないかと考え、前例のない新たなコンセプトを持つ止水板の開発をスタートしました。」

「当時、古河電工機能樹脂事業部門では、それまでのプロダクトアウト的なやり方から離れ、より生活者に求められる新商品をつくろうとしていました。」

「そんな中、数十個近くの自治体や防災関連団体を訪問し水害関係における困りごとを聞いて回ったところ、「浸水対策の為、土のうを備蓄しておきたい気持ちはあるものの、土のうは1袋あたり15~20kgと重く、袋に土を詰める作業も必要なことから、突発的な大雨の際には設置が間に合わず困っている。」「備蓄品の保管場所がないのでなかなか対策が進まない。」といった声が多く寄せられました。

「そこで、保管場所をとらず手軽に備えられる上、いつでも、だれでも簡単に素早く使える、今までにない新しい止水板をつくろう、ということが目標になったんです。」

止水性・施工性・保管性の両立に挑み続けた1年間

―― 古河電工機能樹脂事業部門の既存製品・既存事業は成熟市場であったことから、新商品・新規事業は戦略上、重要な位置付けとなっており、止水板の開発は大きな期待が寄せられていた。そのようなプレッシャーの中で挑む過去に経験のない新しい止水板の製品設計は、スタートから失敗や苦労の連続だったという。

「自然災害はいつでも、だれにでも襲いかかる可能性があります。その為、高い止水性に加えて、だれでも簡単に組み立てられる製品形状に仕上げる必要がありました。この止水性と施工性の両立に非常に苦労しました。

最初は、施工性を重視しすぎるあまりに、止水板連結部からマーライオンのように水が漏れ出してきて、止水板として全く使い物になりませんでした。ああでもない、こうでもないと最適な製品形状についてアイデアを考え、思いついたアイデアを図面に書き起こし、試作して、止水試験を行うことで止水性と施工性を確かめる。そんな先の見えない、地道で途方もない作業が1年以上続きました。」

保管性と施工性の両立にも非常に苦労しました。玄関や倉庫に手軽に備えられるよう、止水板に折り畳み機能を付与したいと考えていましたが、折り畳み式ということは、「設置」に加えて、「組み立て」という「手間」をお客様に押し付けることになってしまいます。この設置時の「組み立て」という「手間」をどうにか削減できないか、来る日も来る日も考え続けました。

共創と知的好奇心から生まれた新しい止水板

―― そんな困難を乗り越えられた理由こそ、開発チームメンバーや鹿児島県薩摩川内市の方々との共創だったという。

「2020年1月に鹿児島県薩摩川内市と古河電工は、産業振興に関する連携協定を締結しました。鹿児島県薩摩川内市消防局殿に試作品である止水板を使用して頂き、実使用環境での性能を確認した後、試作→実地検証→改良設計を繰り返すことで製品開発を進めていきました。手軽に備えられて、老若男女問わず簡単に持ち運べて、簡単に組み立てられ、簡単に片づけられる、そんな製品形状とするにはどうしたらよいか、日々開発メンバーと意見交換を重ねました。

薩摩川内消防局の方々からは、点字ブロックの上で止水検証を行うべきでは等、現場経験があるからこその意見を頂くこともできました。皆様からの意見がなければ止水性と施工性を両立した製品形状を実現することは難しかったと思います。

「また、常に好奇心を持ち、考える続けることをやめないことが開発の成功に繋がりました。保管性と施工性を両立させる為にはどうすべきか、お風呂に入っている時や帰宅途中、寝る直前まで常に考えていました。」

「そんな時、ふと身の回りを見回すと折り畳み式のプラボックスが目に入りました。無性にプラボックスの構造が気になった為、すぐに工具を使って分解し、どのような構造となっているのか調査しているうちに、設置と同時に組み立ても完了できる現在の折り畳み式止水板F-shieldの構造を思いついたのです。

「常に好奇心を常に持ち、考えることをやめない。今後の開発においても、この考えを意識して取り組んでいこうと思いました。

防災製品で世界中の人に貢献したい開発者が抱く思い

―― 2022年6月、ついに折り畳み式止水板F-shieldが発売開始した。飯田は本製品の開発を通して、多くのことを学び、実感したと言う。

人の命を助けたいという想いがもっと強くなりました。良い防災減災製品があっても、被災したときにその場になければ意味が無い。使い方が分からなければ意味が無い。これからは、手軽に備えられて簡単に組み立てられる、まさに折り畳み式止水板F-shieldのような防災製品が求められていると開発過程の中で実感しました。

自分が携わった製品は我が子のようなものです。試作品の段階から喜んで使って下さるお客さんが多く、嬉しく思いました。今後は、日本だけでなく世界も視野に入れた上でこれまで以上に多くの人々に貢献できる防災製品を生みだしていきたいです。

折り畳み式止水板F-shield 開発チーム
代田氏・飯田氏・松井氏

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