「つづく」をつくり、世界を明るくする。「古河電工グループ パーパス」に込めた思い

古河電工は、2024年5月23日に「古河電工グループ パーパス」を発表しました。このパーパスは、古河電工の若手・中堅従業員で構成されたプロジェクトメンバーが制定に携わりました。本記事では、プロジェクトメンバーの座談会を通してパーパス決定までを振り返りながら、このパーパスに込めた思いをお伝えします。

  • 本文中ではプロジェクトをPJと省略いたします。
  • せいの よしひさ清野 義久
    電装エレクトロニクス材料統括部門企画統括部銅条・高機能材企画課長

    古河電工グループの源流とも言える銅を扱う事業部門からの視点でプロジェクトに参加

  • たじま まさふみ田島 正文
    戦略本部マーケティング統括部マーケティングデザイン部経営戦略課長

    研究開発と営業統括本部の経験から、研究・営業メンバー双方の立場でプロジェクトに参加

  • もり すみと森 澄人
    エネルギーインフラ統括部門産業・電線機器事業部門エネルギーバックキャスト課

    入社以降インフラ事業の技術開発に従事、技術者目線でプロジェクトに参加。メンバー一番の若手

  • すずき れい鈴木 嶺
    機能製品統括部門AT・機能樹脂事業部門機能樹脂エンジニアリング営業部2課

    キャリア入社の立場から他社での営業経験も踏まえ客観的な目線でプロジェクトに参加

  • ふじわら なおき藤原 直樹
    戦略本部経営企画部戦略推進室

    2023年4月からプロジェクトの事務局兼メンバーとして参加。プロジェクトに入る前も自発的にパーパス検討の従業員対話に参加している

  • おざき ゆうこ尾崎 優子
    戦略本部広報部

    パーパス制定プロジェクト事務局兼メンバーとして参加。今回の座談会での進行役

  • 座談会当日は欠席のメンバー
  • ごとう けんいち後藤 健一
    研究開発本部フォトニクス研究所次世代ネットワーク開発部第1課長

    業務で海外を飛び回るなか、積極的にプロジェクトに参加(今回の座談会も海外出張のため欠席)

  • みやま あやき三山 文葵
    戦略本部サステナビリティ推進室

    パーパス制定プロジェクト事務局兼メンバーとして2024年1月まで参加し、プロジェクト立ち上げ時のメンバー勧誘から最終案決定までプロジェクトをけん引。現在育児休業中

従業員の心のよりどころになる、良いパーパスを。プロジェクトが進むにつれて起きた意識の変化

—はじめはパーパス制定そのものへの疑念から

尾崎「まず、このパーパス制定PJに参加することになったとき、どんな気持ちでしたか?」

「指名されたときは、“そっかぁ~”くらいでした。入社して8年目になるんですけど、ずっと事業部門で技術開発に携わっていてコーポレート系の仕事をした経験がなかったので、良い機会かな、くらいに思っていました」

清野「私は声をかけられる直前まで別の研修に参加していて、それをきっかけにグループ理念やM・V・V(ミッション・ビジョン・バリュー)について意識するようになったんですけど、その頭でいたら今度は“パーパス制定”って言われて。また新しいもの作るのか?!っていう反感も少しあったんですけど。逆に“やってやるわ、やってダメだったらM・V・Vな!”みたいな気持ちでした」

鈴木「私は、古河電工に入って思ったのが、結構プロジェクト系多いなって。だからついに自分にも来たか…!というのが最初の反応でした。これまであまり理念とか意識してこなかったので、“コレ自分がやっていいのかな”とか、“どれくらいの工数かかるのかな”とか、そういうことを考えていましたね」

田島「私はこれまで、プロジェクトものにご縁がなかったんですけど(笑)ついに来たか、という感じでした。ただ、パーパスが存在意義であり、働くための理由につながるものだという説明を聞いたとき、辞めていった同期や後輩のことを思い出して、一緒に働く仲間にとって良いものが作れるんだったらやりたいな、という気持ちになりました」

尾崎「私は事務局として参加、という前提で声をかけられたんですけど、そもそも古河電工にはグループ理念があるしそれで十分じゃない?という、制定に対して後ろ向きな気持ちが強かったかも知れません」

—「最優先の制定目的=従業員の働きがい」、「パーパスをグループ理念と置き換えて整理」、という方向性が固まってから徐々に前向きに

尾崎「最初はみんな、そこまで“パーパス、やるぞ!!”っていう雰囲気ではなかったですよね」

田島「みんな最初はネガティブだった気がする」

「パーパスが出来ることで、何かが変わるって意識があまりなかったかな」

田島「一回作ってみて、それを見てどうするのか決めましょう、っていうスタンスだったと思うけど、宮本さん(戦略本部長)がPJ序盤の打合せで、“最終的にパーパスを作らないっていうのが総意であればそれでも良い”と話されて、そこで憑き物が落ちたというか、少し落ち着いたかなと思います」

藤原「作ることが目的じゃないっていうことが確認できた」

田島「そう、それを言ってくれたのが大きかった」

尾崎「議論していった結果、パーパスを作るのがグループ理念と置き換える前提になりましたよね。そして、制定する目下の目標が“従業員の働きがいにつながること、モチベーションアップ”というところも結構早い段階で決定して」

鈴木「最初はまたスローガンが増えるのかっていうネガティブな思いもありましたけど、グループ理念もパーパスに集約してシンプルに一つにまとめよう、という方向に進み始めたあたりから、“せっかく作るなら良いものを”っていう気持ちに切り替わっていった気がします」

清野「スタートしたときは、前提がフワフワしていた感じがして気持ちが入らなかったんですけど、ステークホルダーの中でも特に誰のためのパーパスだ?っていう議論から、“まずは従業員で、一人ひとりの働きがいにつながること”というのが固まってきたあたりから自分の思いを入れられるようになりました」

「最初は定義からでしたもんね。“こういうものをつくってください”じゃなくて、“パーパスを検討しなさい”っていうところから。最初は何から始めたら良いかわからなかったけど、フレームワークに落とし込んで、古河電工グループらしさとか要素を洗い出して、そこから、How=どのようにして、対象をどうするかっていう目的を整理する型にはめて案を作るっていう。型が有って進めやすかった」

尾崎「みんな、最初の案出しの宿題で自分の案として完成して見せるところまで出来ていてすごいと思いました」

清野「でも、初案を従業員の皆さんとの対話で見せたときは、“長い”とか“固い”とかボロボロに言われたよね(笑)」

尾崎「色々ツッコミを受けつつも、普段なかなか接する機会のない色んな部門の皆さんの意見を聴けて興味深かったですよね。そこに、藤原さんも参加していたんですよね」

藤原「そう。その時は対話参加者として、“皆さん、頑張ってください、応援します!”なんて言っていたのに、まさかPJメンバーになるとは(笑)
でも、途中から参加して思ったのは、PJメンバーみんながすごく熱くて、のめり込んでいる印象でした」

尾崎「たしかに、従業員対話を始める前に案をまとめるあたりから、“やるからにはしっかりとやらないと”って気持ちになっていましたよね。私は、PJメンバーのみんながすごい勉強して取り組んでいる姿に刺激をもらっていました」

「従業員誰ひとりとして取り残すことのない」パーパスに

—「つづく」に込めた思い

尾崎「パーパスをより短くシンプルにブラッシュアップしていく過程で、“つづく”というキーワードが出てきて、パーパスに込めたい内容として2つの課題を一気に解消できるワードだと思いました。
一つは、過去・現在・未来という時系列が全部つづいている、という表現。伝統もあって未来志向もあるという古河電工グループらしさを表すには一番しっくりきた言葉だったということ。そしてもう一つは、ケーブルとか目に見えるものを“つなぐ”という言葉だけでは表現しきれない、当社の幅広い事業全体を指せる表現としての“つづく”。さらに、事業だけでなくて持続可能な社会の実現というサステナブルな要素も含んでいる表現で」

清野「そう、“つなぐ”じゃなくて、“つづく”なんですよね」

鈴木「会社には、バックオフィスの人とか、事業部門の製造現場の人とか、色んな人が働いていて。しかも、ある事業分野をイメージすると他の事業の人には当てはまらないという難しさがあって。例えば、パーパスの表現に“ケーブル感”があると、ケーブルを扱っていない部門の人たちは疎外感をおぼえたり。そういった意見もくみ取って、当社グループのみんなに当てはまるような表現にできたかなと」

藤原「当社グループの事業は多岐にわたり、歴史も長いからこそ、それらをパーパスとしてまとめる・表現することはかなり難易度が高かったですよね」

—印象的な「つづく」か、第一印象の分かり易さか

尾崎「“つづく”と“世界を明るくする”を使ったパーパス案が一旦まとまって、PJとしてはこれで決まり!と思っていたところに、役員の方からの指摘が入りましたね。本来の文法とは異なる“つづく”の使い方に、分かりづらさや違和感があるということと、“つづく”よりもっと未来志向な表現にすべきという…」

鈴木「そこからもう一波乱ありましたね。そこから、“つづく”を使いつつも、指摘された課題を解決できるようにブラッシュアップするか、全く新しく分かり易い表現のものを作るか。色々案をだして、最終的に2択に分かれたんですよね」

清野「最後まで意見が真っ二つに割れましたよね」

—最終案決定へ。メンバーの思いを後押ししてくれたのは、森平社長

尾崎「複数案を考えて、従業員との対話やアンケートも実施して、それでもPJでの意見は最終候補の2つに割れたままでしたよね。そこから最終的に今の“つづく”案にみんなの意見がまとまったきっかけと言えば」

藤原「森平社長との対話が大きかったですよね。2回対面で対話する機会をいただいて。 1回目は、どんなメンバーがPJに携わっているのか知りたいという目的で。その時に社長が聞いてくれたのが、“皆さんにとって今の案は何%の出来か?”という質問。それに対して私たちからは、“今の完成度は90%前後。残りの10%は浸透活動の中で社員全員がパーパスを自分事化することで100%のパーパスになる”ということをお伝えしました」

田島「2回目に対話したときもPJメンバーの中で意見が分かれたままだったんだけど、あの時に社長が一人ひとりの意見に耳を傾けてくれて、メンバーの思いをくみながらコメントしてくれたんですよね。その上で、“浸透活動で理解を深めるという前提で、少し尖った表現にしても良いのでは”、“最終的にはPJメンバーで決めて良い”と言ってくれたのが、すごく心強かった」

清野「そうそう!“PJのみんなが決めたものを説明できるようにする。何か言われても私が説得するから大丈夫”って。すごかった!」

尾崎「あと、事務局として参加していた赤塚さん(戦略人事部長)が、“100%の正解なんてないから、最後は『この案であれば悔いはない』って覚悟を持てる方を選べば良いよ”とアドバイスをくれたのもとても大きかったですよね」

「最終的にはPJみんなの思いが入っている方を選ぶ結果になりましたよね」

2024年1月 森平社長とPJメンバーとの対話後の記念撮影

藤原「森平社長は、社内発表のときも、かなり時間をとってパーパスの紹介をしてくれましたよね」

尾崎「ただ“パーパスを作りました、これです”じゃなくて、“一人ひとりが自分にとってのパーパスは何か、存在意義について考え、自分事化していくことが大事”ということを強調してお話しされていましたよね」

藤原「私たちが森平社長との対話でお伝えした”社員全員がパーパスを自分事化することで100%のパーパスになる”ということを、社長ご自身の言葉で社内に語ってくれたことが、率直に嬉しかったですし、PJメンバーのこれまでの苦労が報われた気がしました」

2024年4月古河電工の部門長以上とグループ会社の代表が一堂に解するイベント“One Furukawa Conference”。
ここで初めてグループ内にパーパスが発表された
社内発表当日に、社長のメッセージ動画も公開

従業員一人ひとりが「古河電工で働く理由」を考えるきっかけに

—パーパスがどんな存在であってほしいか

尾崎「最後に、このパーパスが従業員やパートナー企業から見て、どんな存在になってほしいと思いますか」

清野「ありきたりなんですけど、従業員の皆さんに働く意義を見出すきっかけになってもらえたら良いなと思います。工場でものを作っているときって、最終的にどんな製品になって社会に役立っているか分からないんですよね。その時に、今自分がやっていることが“『つづく』をつくっていることなんだ”、“世界を明るくすることなんだ”って、考えるきっかけになってもらえれば」

鈴木「私もほぼ同じ考えです。仕事って自分のやっていることには代わりがききますし、当社の製品もおそらく代わりはいっぱいあって。でも、何かお客様、ひいては社会のために役立っていて、それに携わっている自分も何かしら役に立っているのかなって、ふとした瞬間に働く意義について考えさせられる、そのきっかけになるようなパーパスであってほしいと思います。
取引先にとって、というのはなかなか難しいですが、当社のパーパスに興味を持ってもらったときに、説明を通して共感いただけたらなと思います。ただ、それはまだこれから私たちが自分事化、業務との紐づけをしてからかなと」

「お二人と言いたいことは一緒なんですけど、“視座”が上がるようなきっかけになれば良いかなと思います。自分がやっている単純作業が、何をやるための作業なのか、先のことを考えられるような。例えば開発も、デザインレビューを通すためにやっているのではなくて、ちゃんとした品質の製品を納めて、使っていただく方のメリットを生み社会に貢献する、というところを目的とすると、仕事の仕方とかも変わってくると思うので。パーパスを見ただけでそこまで考えるかっていうと難しいかも知れないけど、それを考えるきっかけにはなれるかなと思います」

藤原「良いこと言うな~」

田島「私も基本的に皆さんと一緒なんですけど、研究開発の分野って何年も同じテーマを続けてもなかなか結果につながらないことが多いので、そういう研究に携わっている人たちのモチベーションにちょっとでもつながるようになればと思います。もしかしたら将来会社の、社会のためになるかもしれない、と考えるきっかけになればいいかなと思います」

尾崎「ありがとうございます。まずは一人ひとりがパーパスをきっかけに、自分が働いている意義について考え、それがやりがいや誇りに思えることにつながると良いですね」

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