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古河電工時報 第119号

めっき構造内における物質移動の計算機シミュレーション

吉田浩一

概要

最近,車載用電気機器用に高機能な材料が要求されている。そのため,クラッド材や多層めっき材が利用されている。今回は,この多層めっき内における物質移動現象を定量的に把握することを目的に数値計算を行った。

まず,多元系状態図計算ソフトウェアPandatによって433KのCu-Sn-Ni系平衡状態図を計算したところ,Cu3Sn, Cu6Sn5, Ni3Sn, Ni3Sn2, Ni3Sn4の金属間化合物の存在が示唆された。そのため,拡散対を用いて各金属間化合物の評価を行ったが,Cu3SnとCu6Sn5の金属間化合物は24時間保持することにより確認できた。しかし,Ni3Sn, Ni3Sn2, Ni3Sn4の金属間化合物は1000時間保持しても確認できなかったことから,この金属間化合物の生成については無視した。シミュレーションを行ううえで次の仮定を行った。

  1. 界面反応障壁は無い。
  2. 空孔は無い。
  3. 各相における各原子のモル体積は一定とする。

各相における各原子の物質移動係数(D)は,拡散実験を再現する値を採用した。
計算結果並びに実測値から次のことが確認された。

  1. Cu-Sn系とCu-Ni-Sn系での多層めっきの濃度プロファイルにおいて,計算結果と実測値とはよく一致した。
  2. ε相の厚みが1μmより小さい領域では界面反応律速型で層は成長するが,それ以上では拡散律速型の層の成長が確認された。
  3. 反応障壁は小さい。
  4. Sn中のCuのDは,拡散係数の外挿値よりも小さな値になった。
  5. Cu3SnのCuのDは,拡散係数の外挿値と同じ値になった。


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