お客様の声に新技術で応える!インフラレーザ™市場開拓への挑戦
産業用レーザで培った技術を応用して生まれた、インフラ構造物向けの表面処理ソリューション事業の新ブランド「インフラレーザ™」。インフラメンテナンスの老朽化対策における社会課題解決に役立ち、安全・安心なインフラが「つづく」ことに貢献しています。本記事では、お客様の声(VOC※)から生まれ、発展してきたインフラレーザ™の技術について紹介します。
- ※VOC : Voice Of Customer
産業用レーザ技術×VOCから生まれたインフラレーザ™
古河電工は光通信で培ったさまざまな技術(光ファイバ・半導体レーザ・光融着技術など)をファイバレーザに展開し、また長年金属製品を扱っている当社の強みを生かし、お客様の要望に合わせた、ファイバレーザによる溶接・切断・穴あけ技術の開発を続けています。
インフラレーザ™はそんなファイバレーザ技術の応用から生まれました。
近年、産業用レーザを使っていただいているお客様から、「レーザで塗膜除去や錆取りが出来ないか」という声が挙がってくるようになり、2020年から、このインフラレーザ™の開発に着手、2022年からラボでの実験を開始、試行錯誤を重ね、お客様の希望に応える技術を作り上げました。
従来の産業用レーザが、レーザにより金属を溶融させ切断や溶接を行うのに対し、インフラレーザ™はレーザにより表面の塗膜や錆を蒸散(気化)させます。
日本国内ではインフラの老朽化と労働人口の減少という社会課題が同時に進行しており、持続可能なメンテナンスの実現が求められています。
従来のインフラ構造物のメンテナンスにおける錆取り・塗膜除去をはじめとする表面処理は、薬品を使用する工法や研削材を対象物表面にぶつけて加工を行うブラスト工法が中心です。薬品を使用する工法では環境や人体に影響を及ぼす可能性があり、ブラスト工法では研削剤などを大量に排出するため、環境負荷や労働衛生の観点から課題が多い状況です。
そこに、このインフラレーザ™の技術を適用すると、薬品を使わない上に研削材などを排出せずに錆取り・塗膜除去出来ることから、環境負荷の低減や労働衛生の改善の推進に役立つことができます。
古河電工技術の融合・応用で、VOCを叶えるレーザ技術に進化
インフラレーザ™をお客様に安心して使っていただけるよう、構造物本体にダメージを与えないレーザ処理の実現に向けて大きな課題となったのが、独自の光学技術の開発と、手持ち式やロボットへの搭載に対応できる小型レーザヘッドの開発でした。
これらの課題解決に向けて、古河電工グループの総力をあげて取り組みました。
技術開発面ではエレクトロニクス研究所(熱解析)、マテリアル研究所(金属分析、樹脂に関する知見)、サステナブルテクノロジー研究所(解析)と、古河電工の各研究所が協力しています。レーザのフォトニクス技術と、塗膜のポリマー(樹脂)に関する知見、そして母材に多く含まれるメタル(金属)の知見が開発に欠かせない中、それらをすべてコア技術として有している古河電工の技術を融合して、はじめてこの技術が生まれています。全てを自社内で網羅している点も強みの一つであると言えます。
また、現地での出張実験やお客様のサポートは、ファイテル製品事業部門の産業レーザソリューション部カスタマーサポートセンターが協力しています。お客様の現場までサポートに赴く対応の強みも生かせています。
そして、実験場の構築や設備の開発にはものづくり改革本部設備革新部が活躍し、知的財産部が上市後の知財網を整備。さらに、VOC取得や拡販においては営業統括本部や各支社が協力しています。
また、鉄道関係や、船舶関係のパートナー企業にフィールドを提供いただき、実証実験を重ねることで、VOCに応えられる製品・技術に一歩ずつ近づけることが出来ています。
はじめは、産業レーザ設備の一部をインフラレーザ用に改良するところから始め、お客様に提案したものの、重機の域をこえられず、「これでは使いモノにならない」と突っぱねられるところからでした。
こういったお客様のVOCが、「実践のためには外でフレキシブルに動かせなくてはいけない」という発想の転換につながり、①小型化して手持ちできること、②安全面と省人化を叶える自走式ロボット化、という明確な開発目標が出来ました。
こうして、開発と検証を重ね、2023年11月には「鉄道技術展」にて、鉄道事業向けのインフラレーザを展示、デモンストレーションブースを設けて実際に照射するところをお見せしました。デモをご覧になったお客様から、母材を傷つけずに塗膜を剥がせる点やその速さを評価いただき、引き合いにつながりました。
実際にお使いいただいた鉄道業者の方には、車両メンテナンスでの表面を剥がす作業時間を、約3分の1にまで短縮でき、作業効率化・省人化につながると高評価をいただいています。
そして、2024年4月、海事セグメントの市場開拓に向け「Sea Japan」に初出展しました。前回まではパートナー企業からレンタルしていた実演ブースも、このSea Japanから自社製に。設置から実演までを全て古河電工のメンバーが行いました。
軽量手持ち式レーザヘッドでの実演デモンストレーションに加え、開発中のレーザ×ロボットによる船舶外板修繕用システムも展示し、来場した多くのお客様から質問や引き合いがあり、手応えのある出展となりました。
新たな市場を開拓し、古河電工グループの主力事業へ!
インフラレーザ™はお客様への提案や展示会出展等を通じて、鉄道事業や海事セグメント以外の業種の方からも、「こんな使い方が出来ないか?」という相談をいただくことがあります。
例えば高所作業に使えるよう、もっと手軽に持ち運びがしたい、塗膜が分厚い・塗膜に樹脂以外の成分が含まれるところを除去したい、など、使い道は多岐に渡ります。
既にリリースした製品だけではこれらのVOCすべてに応えられず、用途に応じてカスタマイズし、光の出力や設備の形状など、それぞれを最適な形に開発する必要があります。
これからもVOCをたくさん集め、お客様に安全に使っていただき、労働人口減少や環境衛生面の社会課題を解決できる製品として、さらに新市場の開拓に挑戦していきます。
そして、古河電工の主力事業に育つよう、強みを生かして技術を磨いていきます!