感染症検出に新検査薬、抗体検査試薬の導入負担を軽減
~蛍光シリカナノ粒子(注1)技術を応用し、赤痢アメーバ症(注2)検出の迅速・簡素化、高感度化を実現~

2016年3月18日

当社は、東海大学医学部と共同で、赤痢アメーバ症向けの抗体検査試薬の開発に成功しました。今回の開発により、赤痢アメーバ症検査の大幅な迅速・簡素化、高感度化を実現し、医療機関での導入負荷軽減 等に貢献します。

背景

赤痢アメーバ症は、我が国で発生する寄生虫症の中で最も重要な疾患の一つであり、五類感染症としての報告数は年間1000例を超えています。直接虫体を検出することが困難な場合も多く、他種との鑑別も必要です。

この確定診断のためには血清抗体や糞便中抗原を検出することが有用ですが、現時点で利用できる方法は限られているため、迅速で簡便に実施でき、かつ高感度な検査法の確立が求められていました。

内容

このたび当社は、東海大学医学部の橘裕司教授と共同で、当社が開発した蛍光シリカナノ粒子(以下、Quartz Dot®)技術を赤痢アメーバ症検査に応用した簡易迅速抗体検出試薬「蛍光イムノクロマト検査薬」の開発に成功しました。

今回新たに開発した「蛍光イムノクロマト検査薬」は、従来3時間~数日かかる検査時間を10~20分と大幅短縮できること、さらに既存の検査手法と同等以上の高感度化を実現することが出来ました。

開発した製品

開発品は、Quartz Dot®とテストストリップから構成される一般的なイムノクロマト検査キットと同様のデバイス形態です。検査方法は、被検液(血清)とQuartz Dot®とを混合させて、その混合液をテストストリップの端部に滴下し、テストストリップ上で生じた蛍光発光を小型軽量な蛍光測定器で測定することで検出の有無を定量判定します。

今回の開発では、大塚電子株式会社で開発された蛍光イムノクロマトリーダーDiaScanαを使用してシステム全体を最適化しました。

蛍光イムノクロマトリーダーとQuartz Dot®技術を用いたテストストリップ(右)

今回の成果は、本年3月19日から開催される第85回日本寄生虫学会大会(宮崎市民プラザ)にて、東海大学と共同発表します。

用語解説

(注1)蛍光シリカナノ粒子(Quartz Dot®):
Quartz Dot®は、有機色素分子を高濃度に含有した蛍光シリカナノ粒子であり、1) 従来の蛍光試薬に比べて高輝度であること、2) 人体に無害であること、3) 高い親水特性を有し生体分子と適合性が高いことが特長です。特に蛍光色素をシリカ骨格に固定させることで、粒子内部からの色素の流出を抑えることが可能であり、長期間の蛍光特性を実現しました。
さらに粒子表面へ生体分子を化学結合させることで、試薬としての保存安定性にも優れており、今後、医療用途を始めたとしたライフ・サイエンス分野への応用などが期待されています。

(注2)赤痢アメーバ症(厚労省 HP から引用):
赤痢アメ-バによる消化管の感染症で、世界中でみられます。世界で毎年10 万人ぐらいがこの感染症のために死亡します。渡航者によくみられる感染症ですが、国内では福祉施設での集団感染、男性同性愛者間での感染がより多く、増加傾向を示しています。
感染は、感染した人が排泄する便中の赤痢アメ-バに汚染された水や氷、野菜や果物、肉類を生で食べることによって感染します。

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