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夢に挑め。

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CHALLENGE
EPISODE

二酸化炭素よりも温室効果が高いメタンガス。その大気中の濃度が過去最高を記録し、早急な対策が求められている。そんな中、古河電工では、家畜の排泄物処理で発生するメタンガスと二酸化炭素の両方を新しいエネルギーに変える研究が進められていた。削減からフル活用へ。世界初のバイオ由来のLPガス生成を実現したのは、クリーンエネルギーの夢に挑む、仲間たちだった。

新事業・開発品

GREEN LPG グリーンLPガス
家畜の排泄物や生ゴミなどを発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素。このバイオガスを原料に生成したLPガスのこと。貯蔵・輸送が可能なため、一般家庭や酪農場など、廃棄物が発生した地域での活用が可能。エネルギーの地産地消&地承に貢献するほか、災害時にも役立つ。

PROFILE

川又 勇来
研究開発本部
サステナブルテクノロジー研究所
新領域育成部 第1課
兼 地産地承エネルギー
プロジェクトチーム 開発部/
2020年入社
LPガスを高効率に製造するための全体プロセスを開発・設計している。
李 悠
研究開発本部
サステナブルテクノロジー研究所
新領域育成部 第1課
兼 地産地承エネルギー
プロジェクトチーム 開発部/
2021年入社
ラムネ触媒®を工業的に利用できる形に加工する技術の開発を担当。

※所属は2023年1月現在

INTERVIEW

「自分たちの技術を磨くこと。
社会の課題を把握すること。
両方のアプローチを大切に」
川又氏:古河電工の事業領域であるエネルギー分野で、もっとカーボンニュートラルに貢献できないかを模索し、始まったのがグリーンLPガスプロジェクトです。当時、メタンガスの大気中の濃度が過去最高を記録し、二酸化炭素に加え、メタンガスも含めた温室効果ガスの削減が求められていました。そんな中、まず行ったのはヒアリングです。
メタンガスの発生が多いとされる農業・酪農分野。その現場が抱える課題を探るため、地方自治体や酪農家などを実際に訪ね、話を聞きました。その中で、従来のバイオガス発電(家畜の排泄物を発酵処理する際に出る、メタンガスと二酸化炭素などのバイオガスを使った発電)では、作った電力をその地域で使用しきれず、余った電力を他の地域に供給したくても送電網が不十分で送れない、といった課題があることがわかりました。そこで、バイオガスを貯蔵・輸送ができるLPガスに変換する案が浮上。
LPガスは日本の約4割の世帯で使用されており、工業分野でも大量に消費される資源のため、そのグリーン化(燃焼時に温室効果ガスを大気中に増加させない状態)は、カーボンニュートラルの実現に欠かせません。さらに、LPガスにすることで、近年多発する自然災害にも復旧の早さで役立つほか、エネルギーの地産地消&地承(グリーンLPガスを新たな産業として地域社会で承継する)が可能となり、地域の自立にもつながります。
古河電工に伝わる「自分たちの技術を磨くだけでなく、どういった社会課題があるかを把握して研究を進める」姿勢によって、より多くの社会課題を解決するゴールが設計できたと考えています。
「同じビジョンを持つ仲間と
困難も楽しめたことが
プロジェクト成功の鍵」
川又氏:とはいえ、バイオガスからLPガスを生成する技術は前例がなく、実現のカギを握る「ラムネ触媒®」も、まったく新しい触媒構造です。古河電工には触媒を扱った経験がなく、かつナノレベルの話なので、分析が一番の壁でした。実際に触媒合成をして、何かができたとしても、それがアイデア通りのものとなっているかを分析する方法がわからない。作って評価するというPDCAを回せなかったんです。でも、古河電工には金属に関する経験や技術、特に分析技術があったので、分析部門の方に何度も相談しながら少しずつ進めていきました。古河電工の人はいい人ばかりで、みんな嫌な顔をせず相談にのってくれるんですよね。 それでも、何かを解決した途端、次の課題が出てくる。触媒に使う金属微粒子をなるべく小さく揃えて活性を高めたり、触媒の寿命を延ばしたり。大変な道のりでしたが、共同研究した北海道大学の増田先生をはじめ、同じビジョンを持つ人たち全員が一つになって努力していて、うまくいかずに議論する時間すら楽しかったですね。それがあったから成功できたんじゃないかと思います。

※ラムネ触媒®…ゼオライトという多孔質材料(スポンジのように小さな穴がたくさん空いている材)に、直径数nmの金属微粒子を埋め込み、固定した構造を持つ。触媒の構造が、ラムネ瓶の内部にビー玉が固定されている様子に似ていることから名付けられた。高温でも劣化することなく、長期間にわたる活発な触媒反応を実現。

「若手がのびのびと
チャレンジできる
環境が整っている」
李氏:私は2021年からプロジェクトに参加しました。ラムネ触媒®は、もともと粉のような状態で、そのまま反応で使おうとすると、反応管が閉塞したり、ガスが流れなかったり、いろいろな課題が出てくるので、ペレット化など、工業利用できる形に加工する技術の開発を担当しています。大学時代では高分子を研究していたため、触媒という新しい知識を身に付けるところからのスタートでした。勉強しながら実験の計画を立てるのはかなり大変でしたが、先人の方々の取り組みを参考にしたり、現地でヒアリングしたりして、少しずつ考察を進めていきました。
会社は若手の意見を積極的に取り入れようとしていて、意見をすごく言いやすい雰囲気です。若手のアイデアを提案する会も設けられています。今回は「こういう形で実験を進めたい」と提案して、そのまま採用してもらいました。裁量が大きいので、慣れて自分のやり方ができてくると楽しいと思います。また、失敗しても自分発信で挑戦したことが評価されるので、若手にとってはありがたいです。フレックスやテレワークなども積極的に取り入れていて、仕事だけでなくプライベートな予定も立てやすいですね。実験するときは出社しますが、実験計画を作成する日や結果を整理したい日などはテレワークを活用しています。
「自分たちの作った技術が
社会の役に立つと
イメージできる仕事」
李氏:このプロジェクトは現在、2030年度の事業化に向け、ラボレベルのプロセスをプラント(工場)レベルにスケールアップする計画を練っているところです。その過程で、技術だけでなく、我々が思い描くエコシステムの検証・実証を検討しています。それは、原料となる家畜の排泄物を提供いただく酪農家、グリーンLPガスの流通を協創するガス販売会社、そして消費者の三者とともに、エネルギーの地産地消&地承を実現するものです。 2031年度以降はこの技術がさらに普及し、さまざまな地域で、各地域に合った形でエネルギーの地産地消&地承が行われることを目指しています。自分が携わったプロジェクトが実際に目に見える形となって、これから社会の役に立つイメージを持てたとき、すごくやりがいを感じますね。日本だけでなく世界中で活用されるとうれしいです。

NEXT STAGE チャレンジの先へ

グリーンLPガスの実用化で、
世界中に新たな社会基盤を。

ラムネ触媒®の発明により、貯蔵・輸送が可能なクリーンエネルギーの創出に成功した古河電工。あらゆる地域社会が経済面・資源面において取り残されることなく、カーボンニュートラルを実現できる社会を目指しているという。この新技術が実現するのは新たな社会基盤の構築だ。実用化の先に広がるより良い世界のために、古河電工の挑戦は、これからも続く。

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