世界トップレベルの検知性能、次世代版車載用「周辺監視レーダ」を開発
~将来の自動運転システムの実現にも大きく前進~

2018年10月29日

古河電工グループの古河AS株式会社(本社;滋賀県、社長;柴田勝美、以下、当社)は、自動車の安全技術に関わる先進運転支援システム(ADAS;Advanced Driver Assistance System)で必須となる「24GHz周辺監視レーダ」の日本初の量産を2016年11月より開始しましたが、更なる安全技術向上、自動運転技術向上に応えるため、より性能を高めた次世代版のレーダ開発に注力してきました。この度プロトタイプ開発に成功し、本年10月より実際の走行条件や周辺環境を想定した車載評価を開始しました。

今回開発した次世代版「24GHz周辺監視レーダ」は、準ミリ波帯を継続して用いることでミリ波周辺監視レーダ(注1)の大きな課題であるバンパー内の搭載性にて自由度を維持しつつ、パルス方式(注2)の利点をさらに延ばして、速度分解能を4倍以上に高めるなど、ミリ波周辺監視レーダ相当の分解能を実現することの両立を可能にしました。さらに、ミリ波周辺監視レーダでは実現が難しい、遠方検知と近傍/極近傍検知(~2m程度)の両立を図り、かつ課題であった検知距離の克服に成功しています。また、体積・重量についても従来比▲40%程度の小型化を図っています。

(注 1)ミリ波周辺監視レーダ:ミリ波帯の周波数として、77GHz(76~77GHz)、79(77~91GHz)を使用した周辺監視レーダ。
高い周波数、広い周波数帯域を使用することで、分解能向上には有利。但し、バンパー影響が大きい。

(注 2)パルス方式;パルス波を送信し、その受信波を検知することで、距離と相対速度を検知する方式。

背景

近年、自動車の安全に対する意識の高まりにより、事故発生を未然に防ぐ衝突回避・軽減対策がより重視され、なかでもドライバーの安全運転を助けるADASは、将来の自動運転にも繋がるものと期待されています。
これらを実現するセンサとして、悪天候時でも車両後方や死角の障害物を検知することが可能な「周辺監視レーダ」の普及が進み、当社では2016年11月より「マツダCX-5」の後側方監視レーダとして採用されていますが、更なる安全技術向上に向け前側方への拡大を含む高機能・高性能化が求められていました。

内容

このたび当社は、パルス方式の特徴を最大限に生かした世界トップレベルの検知性能と安定性能を有する次世代版「24GHz(ISM帯)周辺監視レーダ」の開発に成功し、本格評価を開始しました。

現在、車載用レーダとして認可されている周波数は、準ミリ波(24GHz)とミリ波(77GHz、79GHz)があり、後方監視用周辺監視レーダは準ミリ波、前方監視用周辺監視レーダはミリ波が業界のトレンドとなっています。そうした中、今回当社が開発した次世代版の周辺監視レーダ(準ミリ波)は、後方監視用として競合他社の準ミリ波周辺監視レーダを性能面で凌駕するだけでなく、パルス方式の利点を極大化することにより、前方監視用としてもミリ波周辺監視レーダに対し競争優位にある製品です。
こうした優位性を背景に、今後、様々な車種での採用を目指して提案活動を行うことで、2025年度の「周辺監視レーダ」の売上高200億円(暫定)を計画しています。

特徴

車載用レーダは、「FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)方式」(注3)が一般的ですが、車両や自転車、歩行者などを正確かつ同時に検知するため 既量産品・次世代版開発品共に、「パルス方式」を採用しています。パルス方式は大きな特徴として、「高い分離性能」、「優れた搭載性」、「極近傍検知」があり、その性能を最大限に引き出し、ミリ波周辺監視レーダ相当の性能実現と、小型化を図りました。既量産品からの主な変更点、特徴は以下の通りです。

1. 分離性能向上

電子回路構成の全面的な見直しにより、既量産品比で速度分解能を4倍以上に高めています。これにより、僅かな速度差の複数物標を高度な精度で識別でき、例えば、ICTA(Intersection Cross Traffic Alert:交差点歩行者検知)にて歩行者検知レベルのより高度な制御が可能になると共に、データの安定性にも大きく寄与しています。

2. 近傍/極近傍検出

パルス方式の特徴である近場の検出能力の高さを発展させ、近傍/極近傍(~2m程度)の移動物の検出能力を更に高めたことで、車両周辺の障害物検知能力が向上し、接触防止等に応用可能となっています。将来的には、これまで超音波センサで対応している極近傍領域(~1.5m)の静止物検出にも対応すべく技術開発中です。

3. デザイン影響の最小化

バンパーの影響の少ない24GHz周辺監視レーダに加え、より搭載性の影響を軽減できるパルス方式を継続して採用することで、ミリ波周辺監視レーダで最も問題となるバンパー内搭載の課題を克服しました。

4. 検知距離拡大

24GHzパルス方式レーダは、狭い周波数帯域で電波出力の制限があるために、他方式に比べて検知距離が稼げないという課題がありましたが、専用ICの開発や信号処理の工夫を行い、利得を改善したことで、周辺監視レーダに求められる新たな自動車安全評価試験(NCAP)要件をクリアできるレベルを実現する目途を得ています。

(注 3)FMCW(周波数変調連続波)方式;送信電波の周波数を周期的に変化させる周波数変調(FM)の連続波(CW)を送信し、目標からの反射波が受信される時には送信波の周波数が変化していることから、その周波数差(ビート周波数)を測定して、距離を測定する。

古河AS株式会社概要

創業 1950年11月
資本金 1億円
代表者 代表取締役 柴田 勝美
本社所在地 滋賀県犬上郡甲良町尼子1000
主要製品 ワイヤーハーネス、関連電装部品、車載用機能製品
古河電工持株比率 100%

お問合せ先

古河AS株式会社
営業本部 営業企画部
03-3286-3355 (直通)