トヨタ MIRAI(水素燃料電池車)に高圧配電部品モジュールを納入
~自動車の電動化を支える部品開発でCO2削減に貢献~

2021年3月15日

古河電気工業株式会社
古河AS株式会社

  • 新型トヨタMIRAIのFCシステムに使用される高圧配電部品モジュールを納入開始。
  • モジュールの高精度化・小型化により、FCシステムの組付け作業性を向上。
  • 自動車部品開発を通して電動車普及の促進と2050年のカーボンニュートラルの目標達成に貢献。

古河電工グループの古河AS株式会社(本社:滋賀県犬上郡、代表取締役社長:阿部茂信)は、車載配電部品事業で培った技術でモジュール(注1)の高精度化・小型化を実現した高圧配電部品モジュールを新型トヨタMIRAIのFC(Fuel Cell、燃料電池)システムに納入しました。

背景

二酸化炭素などの温室効果ガスの排出増加による地球温暖化は、様々な異常気象を引き起こし世界中で大きな環境問題となっています。日本政府は、これらの問題解決のために2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、「カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。自動車産業に対しては、2030年代半ばまでに乗用車新車販売を100%電動車にする等の目標を提示しており、今後、電気自動車や水素燃料電池車の普及が加速していくことが予想されます。その中でも水素燃料電池車は、水素を燃料とすることで有害なガスの排出量をゼロにできる究極のエコカーとして注目されています。

内容

今回納入した高圧配電部品モジュールは、システムを構成するFCスタック(注2)や昇圧コンバータ内部の部品間を電気的に接続し、高電圧・大電流の電力を配電するモジュールです。FCスタックは燃料電池車の発電装置で、生み出された電力はFC昇圧コンバータで最大650Vに昇圧された後、PCUなどの機器に分配されています。

特長1:バスバーモジュール方式の採用により高精度、高密度な大電力伝送を実現

FCシステムの構成部品は複数個所で相互に電気的に接続されていますが、その接続手段には一般的にボルト締結や溶接が使用され、伝送媒体としてはバスバー(注3)が使用されています。システム内に配置された部品間を複数個所同時に接続する必要性から、それぞれのバスバーには組み付け時に高い位置決め精度が必要となります。また、バスバーの配策(注4)スペースは限られているため、他部品との絶縁を確保しながら効率よく配策させることが必要です。さらに、組付け工程において作業性を確保するため、製品仮保持後に自立してバスバー位置がずれないことが重要視されています。これまで培った製造技術を活かして、プレス、インサートモールド(注5)、組立の各工程に対して、製造管理、検査工程を最適化することで高い位置決め精度を実現しています。
本製品ではバスバーをインサートモールドしたバスバーモジュール方式を採用することで、これらの要求事項をクリアしました。導体には一般的な銅を採用し、リサイクル性も考慮した設計となっています。樹脂材料には、高温環境に対応するため、耐熱温度が高く、銅の線膨張係数と近く熱応力も小さいエンジニアプラスチックを選択した設計としています。材料選定、構造設計を最適化して、高効率な配策構造と高い組付け作業性を実現しています。

特長2:前モデル比約23%小型化を実現

前モデルよりFCシステムの最高出力が増大し、通電電流が増加していますが、バスバーを最小ピッチで配策したモジュール構造により、電流増加によるサイズアップを加味しても約23%の小型化を実現しています。これにより、世界トップレベルの出力密度(単位体積当たりの出力値)を達成したFCシステムの実現に貢献しています。
インサートモールドを採用するにあたり、部品の線膨張係数の違いから、周辺部品の発熱や通電時の内部温度上昇により熱応力が発生する課題がありました。そこで、熱応力による樹脂クラックを防止するために、内部応力発生を熱応力解析シミュレーションで予測し、最適なバスバーレイアウトと各部分の最適樹脂厚を設定しています。また、樹脂流動解析により、成型時の樹脂の配向性やウェルド部も考慮し、熱応力の低減を図っています。

古河電工グループは今後も、製品開発を通して電動車普及の促進と2050年のカーボンニュートラルの目標達成に貢献して参ります。

製品写真(大きさは500円玉と比較)

端子台(モジュール)配置概略

用語解説

(注 1)モジュール:複数の部品を一体化して、まとまりのある機能を持たせた部品のことです。本製品は電力の伝送媒体であるバスバー、絶縁性能を確保する樹脂部品、他部品との固定部品(ナット、カラー)を一体化させています。

(注 2)FC(Fuel Cell)スタック:燃料電池車に搭載されている発電装置です。燃料電池は水素と酸素を化学反応させることで発電しており、最も簡単な電池の構成単位のことをセルと呼んでいます。セル一つ当たりの発電量は小さいため、実際の使用時には直列に数百枚程度積層することで必要な電圧を得ています。このように積層した燃料電池のことをFCスタックと呼んでいます。

(注 3)バスバー:大電流を伝送するための導体部品のことです。材料としては主に銅が使われています。プレス加工で条材を打ち抜いたり、曲げたりすることで所望の形状にして使用します。

(注 4)配策:部品間を電気的に接続しているバスバーの経路を設計し、限られたスペース内に収まるように配置することです。

(注 5)インサートモールド:射出成型用金型の中にあらかじめ部品を挿入しておき、その部品の周りに溶融させた樹脂を射出注入することで、挿入しておいた部品と樹脂部品を一体化する成型方法です。本製品ではバスバー、ナット、カラー、樹脂部品をインサートモールドにより一体化しています。

古河電工グループのSDGsへの取り組み

当社グループは、「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。」を基本理念に掲げて、4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を軸に、事業活動をしています。さらに、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、当社グループの事業領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定し、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。

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