低誘電材料「Smart Cellular Board®」の新ラインアップSCB®-PPSを開発

2025年7月29日

  • 通信トラフィックの増加や5G/Beyond 5Gの進展により、基地局に用いられる素材への要求が高度化
  • PPS樹脂を用い、低誘電・軽量・高耐熱・難燃性を兼ね備えたSCB®-PPSを開発
  • 独自技術を生かした素材開発により、Beyond 5G/6G社会の実現に貢献

古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:森平英也)は低誘電材料「Smart Cellular Board®(以下、SCB®)」の新ラインアップとして、従来のSCB®が強みとする低い比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)、軽量性に加え、高い耐熱性と難燃性を兼ね備えたSCB®-PPSを開発しました。

背景

近年、スマートフォンやクラウドコンピューティング、動画配信、生成AIの普及などにより、通信基幹網等での通信トラフィックが世界的に増加しています。今後も5G/Beyond 5Gの進展や地方・山間部での通信インフラ整備の加速、また自動運転といった新たなユースケースに対応するため、更に急激な増加が予測されています。これに伴い、世界中でデータセンタの需要が増加傾向にありますが、データの送受信を行う基地局の数も増加しており、設置やメンテナンスだけではなく、機器の能力向上や安全性の面からも、素材の性能に対する要求が高まっています。

内容

このたびPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を用いたSCB®-PPSを開発しました。PPSは、低い比誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を持つだけではなく、耐熱性、難燃性、機械強度、耐薬品性を持つスーパー・エンジニアリングプラスチックです。
SCB®-PPSは、PPSが本来持つはんだ耐熱レベルの耐熱性と難燃性を備えており、PPSリジッド品との従来比で比誘電率(Dk)と誘電正接(Df)を約40%、密度を約70%低減しました。これにより、基地局のアンテナ基板やレドーム等の高出力機器付近や屋外設置といった高温環境でも安全に使用できるとともに、5Gや6Gに用いられる高周波での誘電損失がさらに少なくなり(注1)、設置場所の制約がある基地局の構造負荷の軽減にも寄与します。また加工工程で受ける熱に耐えられることから、フレキシブルプリント基板などにも使用できると考えております。なお、本品のサンプル提供を2025年8月に開始する予定です。
当社は今後も独自技術を生かし、SCB®をはじめ顧客の要望に適した素材開発を進め、Beyond 5G/6G社会の実現に貢献してまいります。

(図)SCB®-PPS

(表)SCB®-PPS 物性値
項目 単位 物性値
密度 g/cm3 0.4
融点 275
引張強度 MPa MD 22
TD 15
引張伸度 % MD 32
TD 30
比誘電率Dk@2.45GHz - 1.6
誘電正接Df@2.45GHz - 0.0015
UL-94難燃性(第5版) - V-0
板厚 mm 0.8

※ 仕様値ではありません。開発中のため、狙い値を変更する可能性があります。

(注) 誘電損失=k × f × √Dk × Df(k:定数、f:周波数、Dk:比誘電率、Df:誘電正接)

展示会出展情報

COMNEXT[次世代]通信技術&ソリューション展内5G/6G World
会期 2025年7月30日~8月1日
会場 東京ビッグサイト

『Smart Cellular Board』と『SCB』は日本における古河電気工業株式会社の商標です。

低誘電発泡材料

Smart Cellular Board®(SCB®)

SCB®は独自のバッチ発泡成形技術によって微細発泡した板状の低誘電材料です。低い比誘電率(Dk)と低い誘電正接(Df)を持ち、高周波化に伴う伝送損失の増大や電波透過性の低下などの課題を解決します。さらに、軽量性と高耐熱性を兼ね備えており、基地局やデータセンタ機器の小型化および高密度実装にも貢献します。


関連ニュースリリース

古河電工グループのSDGsへの取り組み

当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。

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