金子洋、森川龍哉、田中將己、井上博史、東田賢二

概要

金属材料の曲げ加工性に対する結晶方位の分布(=集合組織)を制御する効果と,そのメカニズムについて報告する。本研究ではまず,曲げ加工後の材料における結晶方位マップを詳細に解析し,せん断変形が表面から35 ~ 40°の面状の領域に集中することを明らかにした。曲げクラックはこのせん断帯に沿って発生しており成形性の重要な支配因子である。次に,被加工材の集合組織を制御することによってせん断帯の発達が抑制され曲げ加工性が著しく改善されることを見出した。これらのメカニズムは最小塑性仕事の原理を結晶の多重すべり変形に適用して考察することが有効で,せん断変形の角度やせん断変形が起きにくい結晶方位を矛盾なく説明することが出来た。
当社はインフラ,自動車,エレクトロニクスなどの多くの領域の事業を素材から手がけている。今回見出された金属材料の結晶状態を制御する新技術を更に多くの用途に展開し,設計自由度の向上や生産性の追求など,様々なお客様のご要望にお応えしていく。

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