世界初!浮遊式海中ケーブルで浮体式の風力発電設備と変電所の連結に成功
〜福島復興浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業〜

2013年10月2日

経済産業省による「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」において、古河電気工業(株)、(株)ビスキャスが浮体式の2MW洋上風力発電設備(発電設備)と洋上サブステーション(変電設備)等を海中で電気的に連結する特高圧ライザーケーブルの開発・製作、清水建設(株)が実海域での同ケーブルの敷設にそれぞれ成功しました。

特高圧ライザーケーブルは水中で浮遊し、浮体式設備の動きや波・潮流にダイナミックに追従する電力ケーブルで、こうしたケーブルの開発・製作、ならびに実海域での敷設は世界的にも例がありません。

古河電気工業(株)と清水建設(株)は、「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」を経済産業省から受託した、10企業・1大学からなる福島洋上風力コンソーシアムの構成企業です。実証研究事業では、古河電気工業(株)は浮体式洋上ウィンドファームにおける送電システム全般の開発を、ビスキャスが特高圧ライザーケーブルの製作、接続工事をそれぞれ担当。清水建設(株)は新日鉄住金エンジニアリング(株)とのJVにより、楢葉町から約20km離れた海域への浮体式洋上風力発電設備の曳航・係留、楢葉町と係留海域を結ぶ海底ケーブルの布設・埋設、ライザーケーブルによる発電設備と変電設備との連結等を担当しました。

今回、敷設した特高圧ライザーケーブルは、楢葉町から引いてきた海底ケーブルと変電設備を連結する電圧66kVのケーブル(0.9km×1本)と、変電設備と発電設備を連結する電圧22kVのケーブル(2.3km×1本)から構成されます。外径・重量は、22kV用が146mm・約42kg/m、66kV用が175mm・約52kg/mです。長期にわたる使用においても、ケーブルの弱点である海水が内部に浸透しない優れた遮水性能と耐疲労特性を備えた構造になっています。両ライザーケーブルとも、浮体式設備から海底に至るまでの中間点にブイを取り付け、海中でS字を描くように設置します。S字の部分が浮体式設備の移動・浮き沈みに追随する調整シロとなります。ケーブル開発に当たっては、古河電気工業(株)の挙動解析技術が威力を発揮しました。

一方、実海域における特高圧ライザーケーブルの敷設は、潮流や波浪の影響を受ける非常に難易度の高い工事です。清水建設は海洋深層水取水施設の施工等で培った高度な海洋工事技術を駆使して、水中での形状(S字形)管理、形状を維持するためのケーブル長の調整、ケーブル端末と浮体式設備の連結等の作業に当たり、施工上の課題を克服しました。

現在、係留海域では、発電設備と変電設備を連結するライザーケーブル中央部の埋設工事が最終段階を迎えており、数日内にも竣工する見込みです。

参考

  1. 福島洋上風力コンソーシアムの構成
    丸紅(株)、東京大学、三菱商事(株)、三菱重工業(株)、ジャパン マリンユナイテッド(株)、三井造船(株)、新日鐵住金(株)、(株)日立製作所、古河電気工業(株)、清水建設(株)、みずほ情報総研(株)
  2. 正式事業名称
    平成23年度 浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業
    委託者:経済産業省資源エネルギー庁
  3. 風力発電設備と変電設備の据付位置
    風車−北緯37度18分37.9秒、東経141度15分45.秒
    変電設備−北緯37度18分38.9秒、東経141度14分24.3秒
  4. 株式会社ビスキャスの概要
    所在地:品川区東品川4丁目12番2号 品川シーサイドウエストタワー
    社長:佐久間 進
    設立:2001年9月26日
    資本金:121億円
    株主:古河電気工業株式会社、株式会社フジクラ(各50%)
    業容:高圧・超高圧電力ケーブル、送電・配電用電線及び関連機器・システムの設計、製造、施工
  5. 特高圧ライザーケーブルの構造と敷設状況
特高圧ライザーケーブルの構造図
特高圧ライザーケーブルの敷設状況図