熱輸送性能を大幅に向上、新型ヒートパイプを開発
〜次世代自動車、高速鉄道の熱対策に貢献〜

2015年6月1日

当社は、ハイブリッド車や高速鉄道車両に搭載される電力変換装置(以下、インバータ)およびリチウムイオン電池の放熱・均熱化機器に最適な新型ヒートパイプ(注1)の開発に成功しました。ヒートパイプの設置姿勢を問わず、従来よりも熱輸送量を向上させることで、各種車両の熱対策に貢献します。

背景

近年、ハイブリッド車や電気自動車等、次世代自動車の普及や高速鉄道車両の海外展開が進んでいます。こうした車両では、インバータやリチウムイオン電池の高性能化に伴い、大量の熱を適切に処理する放熱・均熱化対策が重要となっています。

特に車両の登坂時等、熱源が冷却部よりも上部に位置するいわゆるトップヒートモード対策として、ヒートパイプ加熱部へ重力に逆らって作動液を供給する必要がありますが、従来品ではこの機能が不足するため、十分な熱輸送性能が発揮できない場合がありました。

内容

このたび当社は、車両用インバータの放熱デバイスや、リチウムイオン電池の均熱化に最適な新型ヒートパイプの開発に成功しました。今回、新たに開発したヒートパイプは、当社が長年培ってきた電子機器向け細径ヒートパイプの技術を活かし、ヒートパイプのウィック(注2)を金属粉焼結タイプへ変更することで、特にトップヒートモードでの大幅な特性改善を実現しました。

また、このヒートパイプは、凍結状態からの起動性も従来品と比べて優れていることから、これまで対応が困難であった寒冷地での使用も想定しています。

開発した新型ヒートパイプを使用した
ヒートシンクの例

特徴

外径 15.8mm
長さ 350mm
熱輸送量 水平設置で480W以上、トップヒート(約20°)設置で200W以上
売上目標 2020年までに年間6億円

用語解説

(注1)ヒートパイプ
金属管の中に、毛細管力を発揮するウィックと常温付近の温度で液化または気化する熱媒を封入し、両端を封止したものです。小さな温度差でも外部からの動力の供給不要で多量の熱を輸送可能です。

(注2)ウィック
ヒートパイプの加熱部で気化した熱媒は、冷却部で凝縮して液体に戻ります。この液体に戻った熱媒を冷却部から加熱部まで、毛細管現象を用いて運ぶために、ヒートパイプの内部には毛細管構造体が設けられています。この構造体をウィックといいます。

備考

本技術の詳細は、2015年6月3日より開催される「日本伝熱シンポジウム」にて、発表を行う予定です。

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