ラマン増幅器用ポンプレーザFOL1439シリーズの量産開始
およびFRL1440シリーズの開発

〜更なる高出力・低消費電力に向けて〜

2019年3月4日

当社は、今後本格的な導入が見込まれる毎秒400ギガビット(以下、400Gbps)の超高速光通信において、需要拡大が見込まれるラマン増幅器のキーデバイスである高出力、低消費電力の1480nm帯励起光源レーザ FOL1439シリーズの量産化を開始しました。また、さらなる高出力・低消費電力駆動を可能とするFRL1440シリーズの開発を行いました。
3月2日より米国・カリフォルニア州・サンディエゴにて開催される世界最大の通信関連の国際会議・展示会「OFC/NFOEC2019」にて、新たに開発したFRL1440シリーズを展示します。

背景

近年、スマートフォンの普及によるワイヤレスバックボーンの拡大や、クラウドコンピューティング、動画配信、ソーシャルネットワークの普及などにより、通信トラフィックが急激に増加しています。
このようなトラフィックの増加に対応するために、今後導入が進む100Gbps等の超高速光伝送では、光信号対雑音比(OSNR)(注1)の改善のため、雑音特性に優れるラマン増幅器(注2)の需要拡大が見込まれます。ラマン増幅器においては、励起光源として、1400-1500nm帯のレーザを用いますが、更なる高性能化のため、高出力化及び低消費電力化が求められています。
このような用途に向け、この度、高出力及び低消費電力特性に優れた新製品FOL1439シリーズの量産開始とさらなる高出力低消費電力駆動のFRL1440シリーズを開発しました。

内容

本製品群においては、高出力及び低消費電力が重要な特性となります。当社では、高出力及び低消費電力駆動を実現するために、25年以上培ってきたInP(Indium Phosphide)の光半導体チップ製造技術と高精度のパッケージング技術を保有しております。当該製品の実現にあたり、独自の高出力チップ構造を開発し、その光出力を効率的に光ファイバに結合する技術の開発と新チップに最適な放熱設計を行いました。
消費電力は、従来品(FOL1437シリーズの500mW出力時)に比べ、FOL1439シリーズでは33%、FRL1440シリーズでは45%の低減を図りました。
なお、FOL1439シリーズでは、最大光出力600mW(TC=70℃)まで、FRL1440シリーズ最大光出力620mW(TC=70℃)までの高出力動作が対応可能となります。
今後、更なる高出力・低消費電力特性に対する要求が見込まれることから、本製品における技術を基に更なる高性能化を目指していきます。

主な仕様比較 (Cバンドでの比較)

  本製品仕様 従来品仕様
型名 FRL1440シリーズ FOL1439シリーズ FOL1437シリーズ
光出力 (mW) 600 500 500 500
消費電力(W) Max 10 Max 7.5 Max 9 Max 13.5
駆動条件 EOL(注4), Ts=35℃、Tc=70℃
波長(nm) 1420 〜 1465nm
波長精度(nm) ±1.5nm

今後の展開

FRL1440シリーズは2019年度下期に量産開始の予定です。また、本製品で開発した技術は、材料物性の制限で高出力・低出力駆動がCバンド帯よりも実現が難しいLバンド帯ラマン増幅器用励起光源への適用と、EDFA(注3)用ポンプ光源レーザへも適用していきます。

用語解説

(注 1)光信号対雑音比(OSNR):信号光パワーと雑音光パワーの比として定義されます。伝送信号の品質を保つために、極めて重要な因子となります。

(注 2)ラマン増幅器:ファイバに励起光を入射すると、励起光波長より100ナノメートル程長い波長域にラマン散乱が生じます。この散乱光領域に信号光が存在すると誘導放出により光が増幅され、増幅器として利用できます。EDFA(注3)と比較し励起効率は低いですが、帯域は広く、また任意の波長域で増幅ができます。

(注 3)EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifierの略です。光ファイバのコアにエルビウムを添加した光増幅器で、現在波長分割多重(WDM)システムに多く用いられています。980ナノメートルや1480ナノメートルの励起光で1550ナノメートル付近の波長を増幅することができます。

(注 4)EOL:End of Lifeの略で、寿命のことです。