光デジタルコヒーレント通信向けの超小型狭線幅Nano ITLAを開発

2019年9月20日

当社は、次世代の超小型狭線幅ITLA(注1)(以下 Nano ITLA)の開発に成功しました。本製品は、大幅な小型化、低消費電力化に対応し、且つ、超高速光通信に用いられる、多値変調(~64QAM)の光デジタルコヒーレント(注2)伝送に要求される狭線幅の特性を有しております。今回の開発は、5G時代の急激なトラフィック増大の予想に対応して世界的に開発が進む600Gbps超の光デジタルコヒーレント伝送を支えるキーデバイスとして、次世代光ファイバ通信システムの高速・大容量化に大きく貢献するものと期待されます。
本製品については、2020年Q1のサンプル供給を計画しており、今後準備を進めて参ります。また、2019年9月22日よりアイルランド・ダブリンで開催される世界最大級の光技術関連国際会議(ECOC 2019)にて展示予定です。

(注 1)ITLA :世界で本格的な導入が進む毎秒100ギガビット(以下、100Gbps)を超える超高速光デジタルコヒーレント伝送装置のキー部品。Integrable Tunable Laser Assembly の略。

(注 2)光デジタルコヒーレント:光の位相(波の状態)を用いることで、信号劣化に強く雑音の影響を受けにくい伝送方式。光の位相情報はデジタル信号処理を用いて検出するため、少ない帯域幅で多くの情報を伝送することが可能となる。

背景

近年、スマートフォン、クラウドコンピューティング、動画配信等の普及などにより、通信基幹網及びデータセンタ間での通信トラフィックが世界的に増加しており、5G時代を迎え、更なる急激な増加が予測されています。このようなトラフィック増加に対応するため、光デジタルコヒーレント方式による600Gbps超の超高速伝送システムの導入が進められています。光デジタルコヒーレント方式において、信号光及び局発光(注3)の光源となるキーデバイスとして、狭線幅、高出力の波長可変レーザが用いられますが、近年、実装密度向上の要求等により、QSFP-DD、OSFP等の小型且つ低消費電力の光デジタルコヒーレント送受信機(トランシーバー)の開発が進められており、これに内蔵される波長可変光源レーザも、同様に超小型サイズ、低消費電力が求められています。

(注 3)局発光:伝送データから位相の情報を取り出すため、信号光と干渉させる目的で局部的に用いられる光源。狭い線幅特性が要求される。

内容

本Nano ITLAは、従来比約50%減の25mmx15.6mmx6.7mmのサイズを実現し、QSFP-DD、OSFP等に内蔵可能な大幅な小型化を実現しました。また、狭線幅、低消費電力を共に達成すべく、新規のレーザ技術を採用しております。コマンドインターフェースはOIF(注4)で標準化されている規格に対応しており、光通信機器へ容易に導入可能です。

(注 4)OIF(Optical Internetworking Forum) :光ネットワーク機器と、その光部品に関する標準化を推進する業界団体。

  Nano ITLA
(ターゲット仕様)
当社従来品
(FJL-series)
波長可変幅 1528~1564nm (C帯) 1528~1564nm (C帯)
光出力 17dBm 18dBm
線幅 100kHz 150kHz
波長安定性 <±1.5GHz <±1.5GHz
消費電力 3W 5W
サイズ 25(L)×15.6(W)×6.7(H)mm 37.5(L)×20(W)×7(H)mm