世界初 電界共振結合で4.7kWのワイヤレス電力伝送に成功
〜移動体向けワイヤレス給電 早期実用化を目指す〜

2020年1月27日

  • 電動小型モビリティやロボットなどの移動体へ、ケーブルを接続することなく給電する技術です。
  • 小型・軽量化と大電力・高効率化で、環境面でも貢献します。
  • 世界で初めて「電界共振結合(注2)方式」で4.7kW電力伝送を距離95mmで実現しました。

古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内2丁目2番3号、代表取締役社長:小林敬一)は、自動車・エレクトロニクス研究所で開発している電界共振結合方式を用いて、世界で初めて13.56MHz(注3)
で4.7kWの電力を95㎜の距離でワイヤレス電力伝送(注1)する事に成功しました。軽量で、金属異物を加熱しないという電界方式の特徴を活かして、次世代の電動小型モビリティやロボット、無人搬送車などへのワイヤレス給電の適用を目指します。

背景

ワイヤレス電力伝送にはいくつかの方法が存在しますが、当社はその中で、電界共振結合方式の研究・開発に取り組んでいます。この方式を13.56MHz、27.12MHzなどのHF帯と組み合わせると共振用コイルが小型化でき、軽量な送受電カプラ(注4)を構成する事が可能ですが、原理的に大電力の伝送には不向きとされ、これまでは13.56MHzで2.5kWを超える電力の伝送は例がありませんでした。今回、カプラの構造を見直すことにより高い効率で大電力を送る事に成功しました。

図1 ワイヤレスの送電・受電カプラ部

図1 ワイヤレスの送電・受電カプラ部

内容

  • 伝送電力:4.7kW(連続)
  • カプラ効率(注5) :94%(強制空冷時)
  • 伝送距離:95mm
  • カプラ部(冷却ファン除く)、サイズ:H480mm x W480mm x D100、 重量:約4.3kg
  • 電源:13.56MHz・水冷・AB級・5kW級RF電源(市販品)
  • 今後もカプラの小型化、高効率化、大出力化に取り組むと共に、GaNデバイスを用いた高周波電源の開発にも取り組み、2025年頃の実用化を目指します。

図2 小型モビリティに搭載した状態

図2 小型モビリティに搭載した状態

環境調和対策について

高効率なワイヤレス電力伝送の実現により、次世代モビリティの利便性向上を促進し「地球温暖化防止」への貢献を目指します。

用語解説

(注 1)ワイヤレス電力伝送:電線・ケーブルを介さず、空間を電力伝送する技術。

(注 2)電界共振結合:コイルと電極板で構成されるLC共振器(カプラと呼ぶ)により、共振現象を
利用して電力を送るワイヤレス電力伝送技術の一種。

(注 3)13.56MHz:国際的に規定されたISM周波数の一つ。この周波数帯で電力伝送するためには高速スイッチング可能なパワー半導体が必要で、GaN(窒化ガリウム)を適用する検討が盛んに行われている。

(注 4)カプラ:共振用電極板、共振用小型コイル、シールドケースで構成した電力の送受電部。

(注 5)効率:商用電源(入力)⇒電力利用機器(出力)の効率が重要で、途中に入るカプラ部では高い効率を保つことが必要。

(注 6)磁界共振結合:リッツ線をコイル状に巻いたカプラで電力伝送を行う方式。規格等で先行しているが、フェライトを使用し重いことと、カプラ間の金属異物が加熱されるデメリットがある。

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