新しいラマン増幅器用励起光源FRSi4XXシリーズの開発
~さらなる超高速・長距離伝送実現に向けて~

2020年3月10日

  • 近年急増する通信トラフィックに対し、超高速光ファイバ通信における技術革新が求められています。
  • 伝送距離を長延化する前方励起ラマン増幅器用の励起光源を開発しました。
  • 当社は光通信の高速・大容量・長距離化を支える技術開発を進め、5Gなど人々の生活利便性の向上に大きく貢献して参ります。

古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区丸の内2丁目2番3号、代表取締役社長:小林敬一)は、超高速光ファイバ通信において、従来方式よりも伝送距離を伸ばす前方励起ラマン増幅器用の励起光源FRSi4XXシリーズを開発しました。

背景

近年、スマートフォンの普及によるワイヤレスバックボーンの拡大やクラウドコンピューティング、動画配信、ソーシャルネットワークの普及などにより、通信トラフィックが急激に増加しています。このため、今後本格的に導入が進む毎秒400ギガビット(以下、400Gbps)等の超高速光ファイバ通信では、受信光信号対雑音比(OSNR(注1))改善が重要となりますが、既存の光増幅器(EDFA(注2))では必要なOSNRが確保できず、雑音特性に優れるラマン増幅器(注3)の需要拡大が見込まれます。中でも、ラマン増幅の優位性を最大限に生かすことができる前方励起ラマン増幅器に対しては、伝送距離拡大技術として期待が高まっています(注4)

従来は、前方励起ラマン増幅器用の励起光源の出力・雑音特性に限界があったため、ラマン増幅器としては後方励起方式のみが実用化されていましたが、この度、当社は、高出力で低雑音特性に優れた前方励起ラマン増幅器用の励起光源FRSi4XXシリーズを開発いたしました。

内容

FRSi4XXシリーズの特長と開発のポイントは以下の通りです。

高出力

25年以上培ってきたInP(Indium Phosphide)の光半導体チップの設計・製造技術および高精度パッケージング技術を最大限活用し、独自の高出力チップ構造と光ファイバとの高効率結合技術開発を進めるとともに、新チップに最適な放熱設計も行うことで、光出力100mW以上を実現。

低雑音

従来ラマン増幅器用光源に比べ、約20dB/Hz低減。

FRSi4XXシリーズと既製品のFOL1439シリーズを組み合わせ、前方励起ラマン増幅器に最適な励起光源を実現できます。
今後も超高速光ファイバ通信等の需要が高まることから、本シリーズにおける技術を更に高め、5Gの進展を見据えた情報通信インフラの構築に貢献してまいります。なお、本FRSi4XXシリーズは2020年度下期にサンプル出荷開始を予定しています。

主な製品仕様

型名 FRSi4XXシリーズ
光出力(mW) >100
雑音特性 RIN(dB/Hz) <-130(~3GHz)
駆動条件 EOL(注5), Ts=25℃、Tc=70℃
波長(nm) 1420 〜 1500
波長スペクトル幅(nm) >25

用語解説

(注 1)光信号対雑音比(OSNR):Optical Signal to Noise Ratioの略です。信号光パワーと雑音光パワーの比として定義され、OSNRの改善は伝送距離拡大に寄与します。

(注 2)EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifierの略です。光ファイバのコアにエルビウムを添加した光ファイバ増幅器で、現在波長分割多重(WDM)システムに多く用いられています。980nmや1480nmの励起光で1550nm付近の波長を増幅することができます。

(注 3)ラマン増幅器:光ファイバに励起光を入射すると、励起光波長より100nm程長い波長域にラマン散乱が生じます。この散乱光領域に信号光が存在すると誘導ラマン散乱により増幅され、増幅器として利用できます。EDFAと比較し励起効率は低いですが、光ファイバを増幅媒体とするため低雑音であり、増幅帯域が広く、任意の波長域を増幅できるなど優れた特徴を有し広く用いられています。信号光と同一方向に励起光を伝送する場合を前方励起、信号光と対抗方向の場合を後方励起と呼びます。

(注 4)当社2019年3月6日ニュースリース
ラマン増幅用の新しい励起光源技術を開発

(注 5)EOL:End of Lifeの略で、寿命のことです。

古河電工グループのSDGsへの取り組み

当社グループは、「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。」を基本理念に掲げて、4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を軸に、事業活動をしています。さらに、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、当社グループの事業領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定し、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。

関連リンク