古河電工とJAXA、人工衛星用電源開発を通じた共創活動を開始
~ 次世代電気推進機の軽量化・低コスト化で、宇宙用電源事業の創出を目指す ~

2021年3月15日

古河電気工業株式会社
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構

古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小林敬一、以下「古河電工」)と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川宏、以下「JAXA」)は、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)(注1)」のもと、小型衛星向け次世代電気推進機(ホールスラスタ)用の電源開発を通じた共創活動を開始しました。

世界の人工衛星市場においては、年々、小型衛星による地球観測ミッションや通信インフラの構築手段等での需要が高まっています(グラフ参照)。小型衛星は大型衛星に比べて低コストかつ短期間で開発が可能であるため、宇宙関連ベンチャー企業等も参入しやすく、宇宙利用の拡大が期待されている事業分野です。
今回は、技術課題の一つであった「小型衛星の次世代ホールスラスタ(参考図参照)の軽量化・低コスト化」に向け、構成機器である電源に民生技術を活用することで課題解決を図ります。具体的には、古河電工が民生品開発で培ってきた熱設計技術や巻線設計技術、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスの研究等をベースに構築した電源の小型・軽量化技術と、JAXAが培ってきた宇宙環境下における放電制御技術などの研究成果を組み合わせることで、将来必要となる軽量化・低コスト化に係る要素技術の獲得を目指します。
古河電工は、地球観測・通信分野など衛星コンステレーション(注2)への展開も視野に入れ、2025年度の軌道上実証(目標)、2026年度以降の次世代ホールスラスタ電源の事業化を目指します。JAXAは、民生技術の宇宙適用化にかかる検討を行うとともに、将来のJAXAミッションを支える次世代ホールスラスタへの適用可能性も探っていきます。

©古河電工・JAXA

共創活動の役割分担

古河電工:
民生で培ってきた技術を活用したホールスラスタ用電源の製品化と事業開発(宇宙機用排熱設計検討、熱制御デバイス設計検討、電源設計・トランスの試作、電源全体設計検討)

JAXA:
実負荷特性を考慮した電源仕様策定、ホールスラスタとの組み合わせ評価、民生技術の宇宙適用に向けた課題抽出と事業開発支援

世界の500kg以下の小型人工衛星打ち上げ数(内閣府資料をもとに古河電工作成)

人工衛星推進機の種類:「化学推進」と「電気推進」

人工衛星の推進機には、燃料による「化学推進」と電気エネルギーによる「電気推進」の2種類がありますが、ホールスラスタは後者の部類で、電気推進の中では推力が高く、化学推進に比べて省燃費という特長があります。JAXAでは1kW級のホールスラスタの研究開発を進めていますが、世界の人工衛星開発の現場では、より軽量かつ低コストで駆動可能な電源が求められています。

参考図:ホールスラスタの仕組み ©JAXA

(注 1)「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」:宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい事業を創出するプログラムです。2018年5月から始動し、現在、約20プロジェクトを進めています。事業コンセプト共創では、マーケット調査、事業のコンセプトの検討などの活動を、事業共同実証では、事業化手前の共同フィージビリティスタディ、共同技術開発・実証などの活動を行います。
JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)

(注 2)衛星コンステレーション:システマティックに統合された複数基の人工衛星からなる衛星群・システムのこと。コンステレーションは、"星座"を意味します。

古河電工グループのSDGsへの取り組み

当社グループは、「世紀を超えて培ってきた素材力を核として、絶え間ない技術革新により、真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献します。」を基本理念に掲げて、4つのコア技術(メタル・ポリマー・フォトニクス・高周波)を軸に、事業活動をしています。さらに、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、当社グループの事業領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定し、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。

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