伝送システムを低雑音に抑える前方励起ラマンユニットを世界に先駆け開発
~ 光半導体インコヒーレント励起光による高品質化と長距離化を実現 ~

2023年2月27日

  • 低雑音に抑えた光半導体前方励起ラマンユニットを開発し、2023年7月よりサンプル出荷開始
  • インコヒーレント光を励起光に用いることで前方励起ラマン増幅において高品質な信号伝送を実現
  • 今後、光半導体インコヒーレント光源の高出力化で特性改善を継続

古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:小林敬一)は、伝送システムの雑音特性を従来と比較して改善し、信号伝送の高品質化と長距離化を実現する前方励起ラマンユニットを開発しました。本製品は、2023年7月からサンプル出荷し、順次製造を開始します。

背景

ラマン増幅(注1)は光ファイバ通信を支えるコア技術で、現在は受信側から信号光を励起する後方励起ラマン増幅が標準的に用いられています。後方励起ラマン増幅では、信号光と励起光が反対方向に進むため、励起光による雑音の影響は平均化されて軽減しますが、光ファイバを伝搬する信号の伝送特性に改善の余地がありました。一方、信号光と励起光が同じ方向に伝搬する前方励起ラマン増幅は、送信開始地点から信号光の出力を増幅することにより信号光の劣化が少なく、ラマン増幅の効果を最大限に生かせることから実現が期待されていましたが、励起光のゆらぎの影響を受けることが課題でした(図1)。

図1 前後方励起ラマンを備えた通信システム

内容

今回開発した前方励起ラマンユニットは、雑音を抑えたインコヒーレント光を励起光に用いています。インコヒーレント光は広帯域であるため、励起光源と信号光の相互作用を平均化できる特徴があります。そのため、前方励起ラマン増幅において、雑音の影響を抑えて高品質な信号伝送を実現できます(図2)。

前方励起ラマンユニット

図2 前方励起ラマンユニットの模式図

また、従来の後方励起ラマン増幅に比べ、前方励起ラマン増幅を追加した場合は信号光パワーの劣化分が少ないため、信号品質を維持したまま伝送することができます(図3)。その結果、伝送距離の拡大、また、同じ距離ならば一段と高品質な信号伝送が実現し、近年の伝送速度の高速化に伴う伝送距離の短尺化の課題解決に貢献することができます。

図3 信号品質の模式図

これらの開発に加え、現在は当社の独自技術である二次励起方式(注2)を用いてインコヒーレント光を増幅させ、ラマンユニットの高出力化を図っていますが、今後は光半導体インコヒーレント光源の出力向上により、更なる特性改善を進めていきます。

なお、2023年3月7日~9日に米国サンディエゴで開催される「OFC 2023」で本製品を展示(OFS Fitel, LLCブース内・ブース番号3229)します。

(注 1)ラマン増幅:光ファイバに励起光を入射すると、励起光波長より100nm程長い波長域にラマン散乱が生じる。この散乱光領域に信号光が存在すると誘導ラマン散乱により増幅され、増幅器として利用できる。増幅帯域が広く、任意の波長域を増幅できるなど優れた特徴を有し広く用いられている。

(注 2)二次励起方式:インコヒーレント光源の出力をコヒーレント光源で補助する方式。コヒ—レント光源がラマン増幅によりインコヒーレント光源を伝送ファイバ中で増幅させ、コヒ—レント光源が2次的に信号光を雑音が少ない状態のまま増幅させることが可能。

古河電工グループのSDGsへの取り組み

当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。

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