NEDO「フロンティア育成事業」にて高温超電導集合導体の研究開発が本格始動
~ 高温超電導集合導体の研究開発を通じて産業用電磁石の極限性能を追求 ~
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:森平 英也、以下 古河電工)、国立大学法人京都大学(総長:湊 長博、以下 京都大学)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(理事長:石村 和彦、以下 産総研)、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長:浅井 祥仁、以下 KEK)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO、理事長:斎藤 保)が推進する2025年度「先導研究プログラム/フロンティア育成事業」において採択された研究開発テーマ「産業用電磁石の極限性能に資する高温超電導集合導体の研究開発」について、連携して取り組んでいます。
本事業は、2040年以降の新産業創出を目指し、国として新たに取り組むべき領域(フロンティア領域)の研究開発および事業化を推進するものです。本件研究開発のテーマは、「極限マテリアル」領域における高温超電導技術の革新を目指すものであり、医療機器、粒子加速器、電力貯蔵、フュージョンなど多分野への応用が期待されています。
研究開発の概要
現在、以下の5つの研究項目(A〜E)に基づき、各機関が連携して研究開発を進めています。
A:集合導体の設計と試作では、京都大学を中心にIFB-REBCOテープ(注1)、(注2)を用いた4層構造の京都大学が特許を有するSCSC-IFBケーブル(注3)の設計・試作が進められており、古河電工はIFB-REBCOテープの提供と高温超電導導体の設計支援を行っています。
B:高速レーザー加工技術の確立に向けて、古河電工と産総研が中心となり、断続レーザー加工によるマルチフィラメント線の製造精度向上と高速化を目指しています。
C:素線構造と加工条件の最適化では、SCSC-IFBケーブルに適した寸法精度と加工条件を定義し、最適なレーザー光源の仕様を確定する取り組みを行っています。
D:集合導体の機械的特性評価では、KEKを中心に、集合導体の曲げ・引張試験法の確立と放射光を用いた構造評価の準備が進められています。
E:社会実装に向けた要求仕様の集約では、各産業分野の超電導応用機器メーカーからの技術要求を収集し、用途別に分類・優先順位付けを行う作業が進行中です。
今後の予定
2026年3月までに、4層SCSC-IFBケーブルの試作と評価、高速レーザー加工の精度向上、素線構造の最適化、集合導体の機械的特性評価手法の確立、ならびに社会実装に向けた要求仕様の集約を完了する予定です。
社会的インパクト
本導体の実用化により、以下のような波及効果が期待されます。
- 設備・動力機械の省エネ化・小型化によるCO₂排出量削減
- 医療用加速器の小型化・ヘリウムレス化による医療基盤の強化
- 電動航空機用モーターの軽量化による航空輸送のカーボンニュートラル化
- 液体水素冷却超電導発電機の普及による水素社会の推進
- 小型フュージョン炉の実用化による基幹電源の革新
用語解説
(注 1)REBCO:レアアース系高温超電導線材。テープ状金属基板上に中間層を成膜し、希土類系元素(イットリウムやガドリニウムなど)、バリウム、銅等からなる酸化物超電導層を結晶配向させながら成膜した超電導線材です。液体窒素温度(マイナス196℃)において超電導状態となり、電流密度が高く、磁場中でも特性低下が少なく、実用化された高温超電導線材の中で最も性能の高い材料です。
(注 2)IFB(Inter-Filament Bridge)-REBCOテープ:フィラメント間に超電導ブリッジを設けた高温超電導線材で、局所的な欠陥があっても電流が迂回できる構造を持ちます。これにより通電安定性が向上し、交流損失を大幅に低減。柔軟性にも優れ、複雑なコイル形状への適用が可能で、次世代エネルギー機器への展開が期待されています。
(注 3)SCSC-IFBケーブル(Spiral Copper-plated Striated Coated-conductor Inter-Filament Bridge cable):京都大学が有する特許を用いた、交流損失が小さく、大きな交流電流を流すことができ、任意の方向に曲げられる高温超伝導集合導体です。金属のコア(芯材)のまわりに、銅めっきマルチフィラメント薄膜高温超伝導線をらせん状に、複数層にわたって巻き付けた構造をしています。
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国立大学法人京都大学
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古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
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