食肉の細菌検出に新検査薬、食中毒を予防
〜蛍光シリカナノ粒子(注1)技術を応用し、食中毒菌検査の大幅なスピードアップを実現〜

2015年3月17日

当社は、大阪府立公衆衛生研究所(注2)(大阪市東成区、所長;山本容正、以下府立公衛研)と共同で、細菌性食中毒菌であるカンピロバクターの新検査薬の開発に成功しました。今回の開発により、生産及び流通現場における食中毒菌の検査時間の大幅な短縮化等を実現し、安心安全な生鮮食品の提供に貢献します。

背景

カンピロバクターによる食中毒は、日本国内では発生件数が最も多い細菌性食中毒です。この食中毒の主な感染源は、食肉処理場における処理過程においてカンピロバクターを保菌している鳥の腸内容物に汚染された鶏肉です。

現在、カンピロバクター検査は、主に「細菌培養法」により実施されていますが、培養に数日間という非常に長い時間を要するために、迅速な検査手法として、金ナノ粒子を用いた「着色イムノクロマト検査薬」が開発されています。この「着色イムノクロマト検査薬」は、105〜106個程度のカンピロバクターが検出可能ですが、「細菌培養法」と比べて検出感度はまだ十分とは言い難く、陽性検体を見逃すこともあるなどから、さらなる高感度が望まれていました。

内容

このたび当社は、府立公衛研との共同研究にて、当社が開発した蛍光シリカナノ粒子(以下、Quartz Dot®)技術をカンピロバクター検査に応用した「蛍光イムノクロマト検査薬」の開発に成功しました。

今回新たに開発した「蛍光イムノクロマト検査薬」は、「細菌培養法」では数日かかるカンピロバクター検査時間を大幅短縮できること、さらに金ナノ粒子を用いた「着色イムノクロマト検査薬」に対しても50倍以上の検出感度を有したことなどから今後、食品・食肉全般のカンピロバクター検査への応用が大いに期待されています。

開発した商品

開発品は、Quartz Dot®とテストストリップから構成される一般的なイムノクロマト検査キットと同様のデバイス形態です。検査方法は、被検液(増菌培養液等)とQuartz Dot®とを混合させて、その混合液をテストストリップの端部に滴下し、テストストリップ上で生じた蛍光発光を小型軽量な蛍光測定器で測定することで検出の有無を定量判定します。

今回の開発では、大塚電子株式会社で開発された蛍光イムノクロマトリーダーDiaScanαを使用してシステム全体を最適化しました。

蛍光イムノクロマトリーダーとQuartz Dot技術を用いたテストストリップの写真

蛍光イムノクロマトリーダーと
Quartz Dot®技術を用いたテストストリップ(右)

用語解説

(注1)蛍光シリカナノ粒子(Quartz Dot®)
Quartz Dot®は、有機色素分子を高濃度に含有した蛍光シリカナノ粒子であり、1) 従来の蛍光試薬に比べて高輝度であること、2) 人体に無害であること、3) 高い親水特性を有し生体分子と適合性が高いことが特長です。特に蛍光色素をシリカ骨格に固定させることで、粒子内部からの色素の流出を抑えることが可能であり、長期間の蛍光特性を実現しました。
さらに粒子表面へ生体分子を化学結合させることで、試薬としての保存安定性にも優れており、今後、医療用途を始めたとしたライフサイエンス分野への応用などが期待されています。

(注2)大阪府立公衆衛生研究所
公衆衛生維持のために各種試験・検査、またその指導を執り行う公的機関です。府立公衛研と当社は、従来のカンピロバクター検査の課題である検査時間の短縮化を検討するために、高感度を特長とする当社の蛍光イムノクロマト技術に着目し、特に近年、食中毒発生件数が増加しているカンピロバクターの「蛍光イムノクロマト検査薬」の開発を共同で進めてきました。

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