超電導フライホイール蓄電システム実証機が完成
〜世界最大級の超電導フライホイール蓄電システムの試運転を開始〜

2015年4月15日

公益財団法人鉄道総合技術研究所
クボテック株式会社
古河電気工業株式会社
株式会社ミラプロ
山梨県企業局

公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、次世代の大容量蓄電システムとして、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」助成事業として、超電導フライホイール蓄電システムの開発を、クボテック株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社ミラプロおよび山梨県企業局と進めてまいりました。

この度、超電導磁気軸受を使用した、世界最大級の超電導フライホイール蓄電システムの実証機が完成し、本システムの試運転を開始いたしましたのでお知らせします。

実証機の外観

フライホイール蓄電システムとは、装置の内部にある大型の円盤(フライホイール)を回転させることによって電力を運動エネルギーとして貯蔵し、必要に応じて回転力を再び電力に変換するシステムです。劣化のない「蓄電池」として用途は幅広く、例えば、太陽光や風力等の不安定な発電システムと組み合わせて電力系統を安定化させるといった用途や、電気鉄道の回生失効対策などにも応用が可能です。本超電導フライホイール蓄電システムは、鉄道総研の考案した高温超電導コイルと高温超電導バルク体で構成される「超電導磁気軸受」によってフライホイールを非接触で浮上させているため、大型のフライホイールを使用しても損失が少なく、長期間の安定した運用が可能な実効性の高いシステムです。

今回完成した実証機は、出力300kW、蓄電容量100kWhで、内蔵したCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のフライホイール(重量4トン、直径2m)を、最高6,000回転/分で超電導磁気軸受により回転支持するもので、超電導磁気軸受を用いたフライホイール蓄電システムとしては世界最大級となります。本システムの超電導磁気軸受は、世界で初めて回転軸側と軸受側双方に超電導材を使用しており、コンパクトサイズで大荷重を支えることが可能です。

本開発成果の詳細は、平成27年5月27日から開催予定の第91回低温工学・超電導学会研究発表会(於:産業技術総合研究所つくばセンター)にて発表いたします。また、今夏には、山梨県米倉山において山梨県のメガソーラー発電所と本装置との連系試験を開始する予定です。

本開発は、クボテック株式会社、古河電気工業株式会社、株式会社ミラプロ、山梨県企業局と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発−次世代フライホイール蓄電システムの開発−」助成事業として実施しました。

資料:研究開発の詳細

本システムの特長

フライホイール蓄電システムは、「より大きく」「より重い」フライホイールを「より高速で回転」するほど、大きなエネルギーを蓄えることができます。「超電導フライホイール蓄電システム」では、特に、以下の技術開発によって大径で重いフライホイールを、高速かつ低損失で回転させることが可能になりました。

1. 大口径CFRP製フライホイール
従来提案されてきたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製フライホイールは、高強度を得る製造方法やコストの面で直径1m前後が限界でしたが、炭素繊維の織り方を工夫することで高強度、高信頼性を実現し、直径2mの大径化に成功しました。また、本フライホイールは、CFRP製ロータ(外径2m、内径1.4m、厚み10cm)9枚を積層したものですが、積層枚数によって様々な蓄電容量のフライホイールを作製することが可能です。

世界最大級のCFRP製フライホイール

2. 超電導磁気軸受
本システムの超電導磁気軸受には、イットリウムを含む第2世代高温超電導線材を用いた高強度な高温超電導マグネットを使用し、回転軸側にも高温超電導バルク体を使用しています。この軸受を50K(-223℃)以下まで冷却して強力な磁場を発生させ、約4トンのフライホイールを非接触で支持することに成功しました。これにより、フライホイールを高速かつ低損失で回転させることが可能となります。また、従来の20K(-253℃)まで冷却する高温超電導コイルより大幅に高い温度である50K(-223℃)で運転することが可能となり、冷却コストの低減がはかれます。

今回完成した実証機は、直径2m重さ約4トンのフライホイールを最高回転数6,000rpmで回すことで、出力300kW、蓄電容量100kWhが得られる世界最大級のフライホイール蓄電システムとなります。

大荷重を支持できる超電導磁気軸受

今後の予定

本システムは、今後、基本特性の確認・調整を行った後、山梨県が運営する米倉山大規模太陽電池発電所に移設し、本夏を目処に太陽電池発電および東京電力株式会社の系統に接続し、変動の大きい再生可能エネルギーの安定導入に向けた実証試験を開始する予定です。

フライホイール実証機の構成

フライホイール実証機の系統接続イメージ

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