超高速400Gbps 光デジタルコヒーレント伝送向け小型ITLA のサンプル提供を開始

2013年9月19日

当社は世界で開発が進んでいる毎秒400ギガビット(以下、400Gbps)の超高速光デジタルコヒーレント伝送装置のキー部品である、小型ITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)を開発し、サンプル提供を開始しました。

本小型ITLAは9月22日より英国・ロンドンにて開催される通信関連の国際会議・展示会「ECOC2013」にて、サンプルの展示を行います。

開発の背景

近年、スマートフォンの普及によるワイヤレスバックボーンの拡大や、クラウドコンピューティング、動画配信、ソーシャルネットワークの普及などにより、通信トラフィックが急激に増加しています。このようなトラフィックの増加に対応するために、光の位相(波の状態)に情報を持たせることで、信号劣化に強く雑音の影響を受けにくい「光デジタルコヒーレント方式(注1)」による100Gbpsの大容量伝送システムの導入が進んでいます。しかしながら、世界では更なる超高速400Gbps光デジタルコヒーレント伝送の実現を目指して開発が始まっています。

400Gbps光デジタルコヒーレント伝送の変調方式として、16QAM(注2)(quadrature amplitude modulation)多値変調技術が検討されています。さらに、周波数利用効率の向上を目指して、伝送速度/変調方式に応じて、周波数帯域をフレキシブル使用するエラスティック光ネットワーク技術(注3)の導入検討が行われています。

本開発品の内容

今回開発した小型ITLAは、従来ITLAと同じOIF規格(注4)を維持したまま、小型化、低消費電力化、高性能化を実現した光源です。エラスティック光ネットワークに使用されるFlexGridに対応した細やかで高精度な波長設定が可能であり、かつ400Gbps伝送に対応した狭線幅の小型ITLA を開発しました。16QAM多値変調においては、従来と比べ信号間距離が短くなり、より雑音の小さい狭線幅化が要求されています。その要求に応えるために、チップ構造を最適化し、300kHz以下の線幅を実現しました。また周波数を0.1GHzグリッド間隔でフレキシブルに可変できる機能も開発し、周波数利用効率の向上に寄与しています。

小型化(従来の1/2以下のサイズ、37.5x20x7.5mm)を実現するために、当社がこれまでに培ってきた高精度光部品組み立て・固定技術を用いて、小型パッケージモジュールを開発しました。回路側も、レーザ駆動回路やデジタル回路の工夫により小型化を図りました。

また、併せて従来比20%減の低消費電力化をはかりました。これは、レーザーチップの性能向上も寄与しています。今後サンプル提供を行うとともに、量産も計画しています。

本開発品の主な仕様

項目 小型 ITLA 仕様 従来 ITLA 仕様
波長可変幅 1528〜1564nm (C 帯)
1570〜1607nm (L 帯)
1528〜1564nm (C 帯)
1570〜1607nm (L 帯)
光出力 16dBm 16dBm
線幅 <300kHz <500kHz
サイドモード抑圧比 >40dB >40dB
平均相対強度雑音 <-140dB/Hz <-140dB/Hz
波長安定性 <±1.5GHz <±2.5GHz
最少グリッド 0.1GHz 25GHz
消費電力 5W 6.5W
サイズ 37.5×20×7.5mm 74×30.5×10.5mm

用語解説

(注1)光デジタルコヒーレント方式
伝送データから光の位相情報を、デジタル信号処理を用いて検出する伝送方式で、少ない帯域幅で多くの情報を伝送することが出来ます。

(注2)16QAM
デジタル変調方式の一つ。4x4の16値のシンボルを利用して、一度に4ビットの情報(従来のQPSK:Quadrature phase shift keyingの倍)を伝送することが出来ます。

(注3)エラスティック光ネットワーク技術
次世代光ネットワーク制御技術の一つ。従来の光波長多重通信では、利用可能な周波数帯域の中で一信号に割り当てられる帯域は固定されています。一方、伝送される情報量や伝送距離は時々刻々と変動しています。次世代のエラスティック光ネットワークでは、これら変動に対応するために、その時々で適切に伝送速度/変調方式を選択、変更し、限られた周波数帯域を最大限に有効利用することが出来ます。速度、方式が可変になることから、 一信号あたりに割り当てられる帯域はフレキシブルに変更される必要があります。

(注4)OIF:Optical Internetworking Forum
光ネットワーク機器と、その光部品に関する標準化を推進する業界団体です。