施工現場での省力化に貢献する低圧分岐付アルミ電力ケーブル

幹線はアルミ導体ケーブル、分岐線は銅導体ケーブルで構成されている。
分岐モールド部を新たに設計したことでコンパクト化し、
現在の床貫通孔の大きさでも通線可能にしている。

ビルやマンションなどの電気室から各階への電力供給には、電線メーカーの工場で分岐線を必要な位置に接続済みの低圧分岐付ケーブルが広く使われている。幹線からの分岐部はすべて工場で加工するため現場で加工する必要がなく、ケーブルの布設が容易、品質が安定しているなどの特長からビル内配電ケーブルの主流となっている。

古河電工グループは、分岐付ケーブルの幹線の導体にアルミニウムを用いた低圧分岐付アルミ電力ケーブル「超軽量ハイブリッド・ビル用ハーネスケーブル」を開発した。製品質量の大部分を占める幹線ケーブルの導体にアルミニウムを採用することで、現行の古河ビル用ハーネスケーブルに比べて製品の大部分を占める幹線で約半分の質量を実現している。

アルミ導体ケーブルに従来の銅導体ケーブルと同じ電流を流す場合、幹線ケーブルサイズは1サイズアップを必要とするが、それでも約30%の質量軽減に成功した。

重さは30%軽減。端末の接続作業はいままで通り

質量比較

アルミニウムは銅に比べて軽いため、ケーブルを布設する際に行われるドラムの荷降ろし、移動、切り返しやつり上げ作業などが容易に行え、布設作業の省力化が期待できる。一方、分岐線は従来通りの銅導体ケーブルなので、設備との接続作業は従来導体と全く変わらない。重さは30%ダウン、接続の作業性は従来通りというアルミニウムと銅それぞれの特性を生かしたケーブルとなっている。

柔軟性比較

今回開発したケーブルの導体に使用するアルミニウムは硬アルミ線であり、現在の銅導体ケーブルに使用している軟銅線に比べて硬い(反発力が強い)ため、同じ導体構成を採用すると現行品よりも曲げ難くなる。そこで、開発品は導体構成を工夫することで現行品よりも1.5倍の柔軟性を実現することに成功した。これにより、ケーブル延線作業や端末処理作業の省力化が期待できる。

銅資源枯渇の環境問題にも貢献

世界的に電線の需要はますます増える見込みで、銅資源の枯渇が危惧されている。アルミ電線での置き換えは、銅の消費量を抑制するという点でも期待が高まっており、本製品はそのような点でも大いに貢献が期待される。

今後の展開について、古河電気工業のエネルギーインフラ統括部門産業電線・機器事業部門エネルギーバックキャスト課長、貝塚啓(かいづか けい)は次のように語った。

「超軽量ハイブリッド・ビル用ハーネスケーブル」は、古河電工グループの古河電工産業電線との共同開発品であり、古河ビル用ハーネスケーブルの高い信頼性を継承しつつ、アルミ導体の長所を生かすための技術が盛り込まれています。また、古河電工パワーシステムズ製の接続材料が使われているなど、古河電工グループの総合力を結集した製品となっています。

幹線と分岐線の接続部ではアルミニウムと銅との接続が行われています。異種金属の接合では接続部で腐食するなどの課題があることが知られていますが、表面の処理や端子の形状を工夫するなど、架空送電・配電分野で培った技術力で課題を克服、製品化に至りました。

架空送電・配電分野ではアルミ電線が広く使われているのに対して、ビルなどの設備内配線ではアルミ導体のケーブルの導入は始まったばかりです。今後は、「超軽量ハイブリッド・ビル用ハーネスケーブル」の幹線に使用している「アルミ導体ケーブル」は、その軽さから布設だけでなく撤去も容易に行うことができるので、これから整備が本格化する2020年の東京オリンピック施設でも人手不足に応える製品として、ご導入いただけるよう活動を進めてまいります。

施工現場の声

安藤ハザマ殿が技術研究所内に建設した研修用宿泊施設に納入しました。

ドラムの移動、切り返しの際に「これは軽い!」との声が聞かれた。特にドラムの切り返しの際、他のCu-CVTのドラムと比べて取り回しが軽やか。

地下の作業者からは「軽いから。声掛けはいらない。」との声が。硬いとの声もあったが、引き込み作業に支障はなく、作業はスムーズに進行した。