次世代の超高速光伝送を可能にするために

光デジタルコヒーレント方式を支える部品開発

総務省が発表したデータによると、2015年5月における日本のインターネット・トラフィック(通信量)は、推定で約4.4Tbps。前年の集計・計測結果と比較すると約1.5倍に増えているという。数値の増加率も前年を上回っており、日本のブロードバンド利用が加速度的に増加していることが分かる。この原因と考えられるのが、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の普及、動画配信サービスの普及であり、この増加傾向は今後も継続していくことだろう。

この問題に対応するためには、さらなる大容量通信を可能にする技術が必要となる。そこで注目を集めているのが、従来の光ファイバケーブルの伝送品質を劣化させる偏波モード分散、波長分散などの影響を抑える、光デジタルコヒーレント方式だ。伝送データから光の位相情報を、デジタル信号処理を用いて検出する方式で、少ない帯域幅で多くの情報を長距離伝送できるという特徴を持つ。

古河電気工業は、光デジタルコヒーレント方式用の光部品として、さまざまな製品を開発。光デジタルコヒーレント方式による100Gbpsの大容量伝送システムの構築に貢献してきた。

これからも、さらなる高速通信を実現するために

光デジタルコヒーレント方式では、信号光と局発光を干渉させて信号の復調を行う。そのため、両者の光源には、安定した干渉を得られる発振スペクトル幅の狭い発光が必要となる。「狭線幅フルバンド・チューナブル・レーザ」は、500kHz以下の狭線幅と40mW以上の高出力を実現する光源だ。波長を任意に選択できるため、伝送路の柔軟な設計を可能にし、コストダウンにも寄与する。

また、光デジタルコヒーレント方式では、2つの直交する偏波で位相変調信号を波及させる必要があり、それを担う信号受信部では、偏波合分波器と光干渉器(コヒーレント・ミキサ)が必要となる。「偏波合分波器内蔵型コヒーレント・ミキサ」は、文字通り偏波合分波器とコヒーレント・ミキサを、1チップ上で実現した製品。小型化に成功しただけではなく、両部品の結合作業も不要になる。

光デジタルコヒーレント方式の今後の展開について、古河電気工業の情報通信・エネルギー研究所、向原智一は次のように語った。
「大容量伝送システムの検証段階でトラブルが起きたときは、何日もお客様先の現場に張り付き、共同で問題を解決し、製品化してきました。こうした経験もまた、新しいシステム構築に活かされています。今後もますます、増大を続けるトラフィック量に対応するため、高機能・小型・低消費電力の光部品が要求されていくことでしょう。私たちは材料や光を基盤技術として、技術革新により市場・顧客要求に対応していきたいと思います」